昇格ルールの変更とCovid-19 −フランス編-


フランスでも、サッカーのプロリーグがシーズン途中で終了したことを契機とする昇降格の問題が発生していました。また、同じタイミングで、サッカーのアマチュア選手権が打ち切りとなったことについて問題が発生していました。
これらの事案は、日本とフランスの弁護士の金塚彩乃先生がブログで紹介されていました。

フランスでは、2020年3月24日に緊急事態宣言が出され、7月10日まで延長されているようです。8月31日までは5000人を超えるイベントが禁止されているようです。首相が2019/2020シーズンのプロスポーツは開催できないと発言し、スポーツ省も非公開を含め8月まではスポーツ競技は実施しないと言及していました。

2020年3月13日の時点でサッカーはすべて中断していましたが、上記の状況を受けて、フランスサッカー協会(FFF)は、2020年4月16日と4月28日に、段階的にアマチュアのサッカーリーグの2019/2020シーズンの打ち切りを決定しました。
そして、2020年4月30日に、フランス・プロフットボール・リーグ(LFP)も2019/2020シーズンの打ち切りを決定しました(残り試合は10試合だったようです)。

こうした決定により不利益を受けることとなったクラブチームが決定を争うこととなりました。

ところで、フランスでは、英国編で紹介したようなスポーツ仲裁ではなく、行政訴訟で争われるという特徴があるようです。この2件は、行政訴訟の最高裁である国務院(Conseil d’État)で判断されました。

これは、フランスのスポーツ法典に基づき、国が一の団体に独占的に試合の開催等を委託することから、団体の決定は行政的性質を有する、という解釈のようです。

プロリーグ事案

提訴をしたのは、League 1のオリンピック・リヨン、アミアンFC、トゥールーズFCです。

リヨンは、打ち切り当時、7位でした。UEFAチャンピオンズリーグ出場要件である1〜3位(3位は予選参加)に入ることは勝ち点的無理でしたが、UEFAヨーロッパリーグ出場要件である4〜6位に入る可能性はありました(5位6位のチームとの勝ち点差は1)。

アミアンおよびトゥールーズは、それぞれ19位と20位(最下位)で、League 2の降格圏内でしたが、シーズンの打ち切りにより、試合数と勝ち点の割合で順位が確定され、シーズンの打ち切りとともに降格も決定されました。

これら3チームがLFPの決定の取消や8月シーズン再開の検討などを求めて行政訴訟を提起したようです。

判決がフランス語なので、Google翻訳で英語や日本語に翻訳して内容を確認しました。

シーズンの打ち切りはLFPの理事会決定だったようです。このため、理事会の権限や構成などが問題とされましたが、クラブの主張は排斥されています(理事会構成がEU競争法違反という主張もありました)。

LFPの理事会は、打ち切りからもたらされる結果について、その権限の範囲で決定をくだすことがきでるとして、打ち切り決定について違法とは認めませんでした。

しかしながら、シーズン途中で終了した結果と降格・昇格が必ずしもつながる訳ではない、と判断し、アミアンとトゥールーズの降格を差し止めしました。

その理由は、Sport Illustratedの報道が分かりやすいです。

裁判官は、2チームを降格させる決定は、次シーズンのLeague 1が20チームで実施するという事実に基づくことができない(LFPとFFFが次シーズン体制の合意をしていない)として、降格を差し止めたのだ、と報じています。要するに、2019/2020シーズンのLeague 1の体制は20チームと決まっているけれど、次年度はまだ決まってないということかと思います。
問題意識として判示されていますが、降格は重大な影響を及ぼすから、公共の利益や他クラブの利益のためということでは正当化されない、と理由があるようです。

裁判官は、LFPとFFFに、次シーズン体制の再検討を命じています。

アミアンとトゥールーズは、次シーズンのLeague 1は、22チーム制(従来は20)を提案したようです。

LFPとFFFはこの判決を踏まえて協議したようで、経済的影響や放映権等の検討したうえで、20・21・22の3案をLFPの総会で投票に付し、約75%の票を得て20チーム案が採用されることになりました。これにより、アミアンとトゥールーズはLeague 2に降格となりました。

一見、判決を無視した対応に見えますが、判決の理由は、次年度体制が合意されていないこと、LFPとFFFで入手可能な資料を踏まえ次年度体制についてよく検討するように、という点をクリアしてのことですので、アミアンとトゥールーズはこの決定にチャレンジするのは難しいのではないかと指摘されています。

ところで、リヨンですが、キャンセルされていないリーグカップ決勝で、パリサンジェルマンに勝てばUEFAヨーロッパリーグに参加できるようです。

アマチュリーグ事案

FFFは、4月16日に執行委員会にてほとんどのアマチュアリーグのシーズン途中での打ち切りを決定しました。
この際、(i)2019/2020シーズンの優勝者はなし、(ii)各階層間の昇降格は1チームとし、獲得したポイントを試合数で割って順位を決めるなどのルール変更を行いました。
このルールは4月28日に打ち切りを決定したアマチュアリーグにも適用しました。

30のアマチュアクラブが4/16の決定の取消等を求めて行政訴訟を提起しました。

争点は、FFFの定款等には定めのない打ち切りや昇降格のルールを、FFFの執行委員会が決定できるか、という点につきます。

この点について、裁判所は、FFFの定款等の規定を拾って、想定されていないすべてのケースについて裁定する権限が与えられていること、昇降格に関する規定を修正する権限があること等を認定したうえで、アマチュアリーグのシーズン途中の打ち切り決定も、Covid19関連の健康危機やシーズン再開の見通しが立たないことから、違法でないと判断しました。

昇降格の点については、本件のような事態はFFFの競技規則では想定されていないから、FFFの執行委員会に委ねられており、裁判所は、FFFの執行委員会が決めた内容が明らかに誤っているかを判断するとして、FFFの昇降格ルールに明らかな誤りはないと判断しました。
各リーグの試合の進行状況が50〜70%とまちまちなことや特にサッカーリーグのピラミッド型の組織の複雑さ(相互依存やルール違いなど)が指摘されており、それをうまく調整できるのはFFFであろうという前提でFFFの執行委員会の裁量を広く認めて判断したもののように思います。

 

いずれの事案も行政訴訟の枠組みで判断されていますが、各団体のルールが前提となっており、団体自治は維持されているように思います。

コロナ下でプロとアマを区別して扱ったのは、英国と同じです。英国では2019/2020シーズンではアマの昇降格はなしという団体の決定が仲裁パネルで支持されたのに対し、フランスでは2019/2020シーズンではアマの昇降格を限定的に認めるという団体の決定が裁判所で支持されました。

どちらもサッカーのピラミッド型の組織を維持する決定と思われます。そして、そのどちらをとるにしても、不利益を被るクラブチームが生じます。昇降格の問題はクラブの経営はもちろん選手の流出や獲得にも大きな影響を与えることになります。

英国仲裁パネルではサッカー全体の利益、フランス行政裁判所ではサッカーの最善の利益などと表現されていましたが、サッカー界が培ってきたサッカー界のシステムの維持と不利益を被る個々のクラブの利益とのバランスが求められているのだと思いますが、両国の判断に見られるように、この判断はとてもセンシティブで難しいもののように思います。

弁護士大橋卓生