米Tattoo著作権訴訟とLandmark Decision


以前に紹介したTattoo事案のうちNBA2Kの訴訟でタトゥーの著作権に関する裁判所(ニューヨーク南部地区の連邦裁判所)の判断が出ました。おそらくタトゥーに関して法的な判断は初めてではないでしょうか。

事案のおさらい

被告となっているTake Twoとその子会社2K Gamesは、NBA2kというNBAを再現したビデオゲームを開発し販売しています。

リアルに再現しているので、選手の身体に彫ってあるタトゥーも再現されています。

原告は、LeBron James・Eric Bledose・Kenyon Martinの3選手にタトゥー彫ったタトゥー・アーティストから著作権を取得した会社ですが、NBA2k14、NBA2k15、NBA2k16について、原告が有する著作権物が無断で複製され、販売されているとして、著作権侵害訴訟を提起しました。

問題となっているタトゥー

“Child Portrait”
James選手の赤ちゃんの写真を、タトゥーアーティストが複製してJames選手に彫ったもの。

“330 and Flames”
タトゥーアーティストがJmase選手の腕に既に彫られていた「330」の文字に陰影をつけ、「炎」のタトゥーを追加したもの。
330はオハイオ州アクロンの局番。
炎のタトゥーはタトゥーに用いられる一般的なモチーフ。

“Script with Scroll, Clouds and Doves”
“Script with Scroll”は巻き物に書かれた文字のタトゥーだと思います。それと「雲と鳩」。
これらもタトゥーアーティストがJames選手に彫ったもの。
巻き物タトゥーはスケッチブックのデザインを複製したもので、原告が創作せいたものでなく、鳩は、古くから人気のあるタトゥーのテーマ。

“Wizard”
「魔法使い」のタトゥーは、タトゥーアーティストがMartin選手に彫ったもので、アーティストが創作したデザインではなく、一般的なタトゥーのモチーフ。

“Basketball with Stars and Script”
「星付バスケットボール」と「巻き物」タトゥーは、タトゥーアーティストが、Bledose選手の指示で、Bledose選手に彫ったもの。

争点

Summary Judgementでの争いなので、事実認定というよりも、法律問題です。

1 de minimsの法理の適否
2 Implied licenseの成否
3 Fair Useの適否

1 de minimsの法理の適否

法諺で「法は些事に関せず」というのがあり、些細な問題は取りあげないというもの。

日本でも刑法で、メモ用紙1枚やチリ紙13枚の窃盗事案で窃盗罪の成立を否定した裁判例があります。

米・著作権法では、著作権侵害が些細なものであり、裁判所が解決するに値しない、として訴えが棄却となります。

この決定によれば、(i)著作物が複製された量、(ii)複製された著作物の可観測性(侵害作品中に服された著作物が観察できる時間の長さ)及び(iii)フォーカス、ライティング、カメラアングル及びプロミナンス等の要素、を勘案して判断しています。

争いのない事実として、次の点を挙げています。

  • 問題となっているタトゥーは、ゲームに登場する400人の選手のうち3人にのみ表現されていること
  • 平均的なゲームプレーでは当該タトゥーを表現した選手が含まれず、当該選手が登場した場合でも、当該タトゥーは、選手のフィギュアの一団の中で素早く動くフィギュアの素早く動く視覚的な特徴として表現されるため、小さくて判別しがたいものであること
  • 当該タトゥーは、ゲームのマーケティング素材に一切使われていないこと

上記事実と証拠を踏まえて、裁判所は、本件使用はde minimsにあたるとしました。主なポイントは次のとおりです。

  • 当該タトゥーは特定できないし、判別できない
  • 当該タトゥーは、ゲーム中に、実際のサイズの4.4%〜10.96%で表現されており、相当サイズを小さくしている
  • ゲーム映像によれば、当該タトゥーに焦点があっておらず、当該選手の腕によく分からない影のようにしか見えない
  • 当該タトゥーは、ゲームに頻繁に登場せず、登場してもカメラアングルや他の要素によって変形され、平均的なゲームユザーニは判別できない

2 Implied Licenseの成否

これは、タトゥーアーティストと3選手の間で、タトゥーを入れる際に、黙示的に一定のライセンスが許諾されているか否か、という問題です。

争いのない事実として、3選手にタトゥーを彫ったタトゥアーティストらは、選手の要請によりタトゥーを彫ったこと、タトゥーを彫る際に、選手がプロバスケット選手であり、当該選手は公衆の前やテレビその他ビデオゲームなどメディアに登場するであろうことを知っており、さらにそのタトゥーは選手の肖像やイメージの一部になることを認識していた、ことが認定されています。

そのうえで、(i)選手の依頼によりタトゥーを彫ったこと、(ii)タトゥーアーティストがタトゥーを創作し、選手の肌にタトゥーを彫ったことによりそれらを提供したこと、(iii)タトゥーアーティストは、選手が公衆の前やテレビ、CM等メディアに登場するであろうことを知っており、タトゥーをその肖像の要素として複製したりすることを知っていたこと、から黙示のライセンス(非独占j)を許諾した、と結論づけました。

3 Fair useの適否

フェアユースの適用は、先例を引用して、事実と法律の混在した問題であるが、重要な事実に関する真正な争点がない場合、サマリージャッジメントの段階で判断できる、としてFair Use(米国著作権法107条)の4要件を検討しています。

①Purpose and Character of the Use

原著作物とは異なる目的を持っているか、”transformative”な使用かが問題となるところですね。
“transformative”か否かの判断は、例のOh Pretty Woman事件の最高裁判例が引用されています。

(i) 両作品が異なる目的を有するか
選手らに彫られたタトゥーは、ボディアートを通じて選手らが自己表現をする手段と認定し、ゲームに複製されたタトゥーは選手を正確に表現するためになされたものであると認定し、異なる目的であるとしました。

(ii)複製のサイズ
ゲームに複製されたタトゥーはかなりサイズが小さくされており、具体的には原著作物の4.4%〜10.96%になっており、かつ、ゲーム中では他の要素と相まって、当該タトゥーを判別しがたくしており、ちらっと見える以上には当該タトゥーの表現的価値を利用していない、としています。

(iii)複製した素材の表現的価値は最小限のものか
当該タトゥーは、まれにしか登場せず、かつ不明確にしか判別できず、他の選手、レフェリー、コート上の靴の音、観衆のざわめき、ホーンや警告音、プレーが音のアナウンスなど現実のNBAを再現するための要素であり、最小限のものといえる。

(iv)複製した素材の割合
当該タトゥーは400名中3名の選手にしか表現されておらず、総ゲームデータに占める割合は0.000286%〜0.000431%に過ぎず、かつゲームプレー中にはっきりと見ることができない。

最後に、NBA2kは商用目的であり、当該タトゥーも商用目的であるが、ゲームプレー中に判別できず、ゲームのマーケティング素材に一切疲れていないとしています。

②Nature of the Copyrighted Work

それぞれのタトゥーは、写真や一般的な物体及びモチーフを描写したものであり、表現というよりも事実に近く、タトゥーアーティストは誰も、当該タトゥーがユニークないし表現上の特徴があるとは言っておらず、一般的なモチーフや自分たちが創作していないデザイン・写真から複製したものと述べている。

③Amount and Substantiality of the Use

当該タトゥーは全体が複製されているものの、ゲームをリアルなものにするという”transformative”な目的を達成するためになされたものであるし、当該タトゥーはサイズを縮小し、それによって芸術表現の視覚的インパクトを大きく制限している。

④Effect on the Market

Transformative useは、原著作物に取って代わるものではない。実際に、原告もNBA2kがタトゥーに取って代わるものではないことを認めており、それゆえ、NBA2kにおける当該タトゥーの使用が、原著作物の権利者から重要な収入を奪うことにはならない。

以上からFair Useの4要件の検討から、NBA2kにおける当該タトゥー使用はFair Useに該当する、としました。

 

創作性なし、でも争えたものもあったように思われますが、そうした抗弁はなかったようです。

NBA2kをやっているので、裁判所の指摘はリアルによく理解できました。違和感のない判断です。

以前に紹介した事案の中のWWEのビデオゲームのタトゥー事案(Take Twoも被告になっています)は、この決定の1週間前に、管轄なしなど訴訟の冒頭段階の攻防がなされていました。こちらはまだ継続しています。

WWE2kシリーズは未プレーですが、タトゥーの使われ方は、NBA2kと同様ですので、同じような判断が下るのか否か、興味深い事案です。こちらは、イリノイ南部地区の連邦裁判所です。

弁護士大橋卓生