KATY PERRY “DARK HORSE”逆転勝訴


以前に取りあげたKaty Perryの著作権侵害訴訟ですが、2019年7月に、ロスの連邦地方裁判所の民事陪審で著作権侵害及び損害賠償$2.87Mという評決が下されました。

陪審員の評決後にもJudgment as a Matter of Lawの動議を出せるようで、2020年3月16日、裁判所は、トライアルに提出された証拠から、陪審の評決を取り消すという結論を出しました。
Katy Perry側の逆転勝訴ということになります。

事案をおさらいしますと、次のような感じです。

Flameというラッパーの楽曲Joyful Noise(2008)の共同著作者が、その楽曲に使用されている8音のオスティナート(リフ。約16秒間のリフレイン)を、Katy Perryらが作曲したDark Horse(2013)に盗用された、というものです。
問題のオスティナートは、両曲とも高い音で主旋律のバックで繰り返されている部分です(Joyfulは冒頭〜、Darkは19秒あたり〜)。

裁判所は、トライアルで提出されたすべての証拠から、原告が主張するJoyful Noiseのオスティナートは、著作権で保護するだけの創作性がない、と判断しました。

本件では、Joyful Noiseのオスティナートが、Dark Horseにコピーされたかが、トライアルでの争点となりました。

これを証明するため、原告らは、(a)Joyful Noiseへのaccess(依拠性)、及び(b)両者のオスティナートのSubstantially Similar(実質的類似性)を立証しました。

(b)のSubstantially Similarの立証には、extrinsic testとintrinsic testが用いられますが、裁判所は、extrinsic testは、法律問題として位置づけています(陪審員の判断ではない)。

このextrinsic testは、Joyfulで保護される要素を特定し、その要素が、Darkの侵害と主張されている要素と客観的に類似しているか、を判断します。

原告らは、joyfulのオスティナートの創作性として、次の9点を主張しています。

1)マイナー形式で作られたメロディ
2)8音のフレーズの長さ
3)”3-3-3-3-2-2″のピッチの配列
4)両フレーズの類似するレゾリューション
5)8音のリズム
6)スクエアで均一なリズム
7)オスティナートとしてフレーズの構造的な使用
8)楽器の音色
9)楽曲の著しくうつろで希薄なテクスチャー

しかし、裁判所は、上記9点ことごとく著作権では保護されない、としています。

原告らの主張を裏付ける、原告側の専門家証人(音楽学者)は、i)ピッチの配列、ii)音符の時的配置(リズムなど)、iii)音色、iv)8音の長さ、v)録音物におけるオスティナートの配置、という5点が類似すると証言したようですが、裁判所は、当該専門家証人が原告らの主張するいくつかの要素(8音の長さやピッチなど)には創作性がないと証言していたことなどから、上記の結論に至ったように思われます。

もっとも、原告らの主張する個々の要素は創作性がなくても、その選択と配置に創作性が認められないかについても、多くの類似判例を引いて、詳細に検討していますが、本件の原告らの主張するオスティナートは特段ユニークな組合せでなく、著作権で保護される創作性が認められない、としました。

他にもいろいろ判断していますが、結論に関わる部分は、以上のような感じです。

今後、控訴も考えられますが、裁判所は、控訴審がextrinsic testが適切でないと判断した場合、新たに陪審を開くことを許可しています。

Blurred Lines判決の衝撃から、米国の音楽著作権訴訟はどうなるかと思いましたが、Stairway to Heaven判決と本件とまともな判断が続いているように思います。

注目すべき音楽著作権訴訟としては、Ed Sheeranの”Thinking Out Loud”が係属中です。

弁護士大橋卓生