LED ZEPPELIN “Stairway to Heaven” 勝訴


“Stairway to Heaven”(天国への階段)のイントロは、もう手ぐせになっているので、ギターを持つとウォーミングアップがわりに無意識に弾いてしまいます。

その著名なイントロ部分が盗作だと指摘され、長年著作権侵害訴訟が続いていました。

訴えたのは、”Taurus”という曲を作曲したSpirtというバンドのRandy California(Randy Wolf)の遺産管理人です。Randy Californiaさんは1997年に亡くなっています。

それでは、聞き比べてください。
Taurus“(1968)の0:45秒〜
Stairway to Heaven“(1971)の冒頭〜

4小節の類似が問題となっています。

Taurusが主張する侵害部分は、Amからルート音が半音づつ順に下がっていくコード進行で、各コードをアルペジオ(コードの音を順に奏でる)展開したもの。

訴え提起当初から、この事案は授業で紹介していました、これが著作権侵害になろうはずがない、と。

Stairway to Heavenも似たような感じですが、上昇していく音も加わっていて、こちらの方が基本的なコード進行や奏法に創意工夫を加えた感じがします。

(9th Cir.の判決より)

両曲ともかなり古い曲ですが、訴訟が提起されたのは、”Stairway to Heaven”がリリースされてから43年後の2014年です。
2014年に何があったかというと、”Stairway to Heaven”が収録されている”Led Zeppelin Ⅳ“(アルバムにはタイトルはありませんが一般的にこのように呼ばれてます)を含むアルバムのリマスター盤がリリースされています。

さて、控訴審である9th Cir.は、地裁での陪審をやり直す決定を出していたのですが、それを覆したということのようで、大法廷決定で地裁の判断(非類似;Led Zepp勝訴)を維持しました。

9th Cir.の判決ですが、控訴人が、地裁が陪審員にした指示等手続上の細かなことに異議を述べているのに対する判断が大半ですので、それほど面白いものではありません。

そのうち、重要と思われるのは、次の点と思われます。

  1. 1909年法の下で著作権登録された楽曲Taurusの著作権は録音物(Sound Recording)に及ぶか
  2. 9th Cir.で採用されてきたInverse Ratio Ruleを陪審員に指示しなかったことは適法か

1.について

1909年法の下、Taurusは、1枚の楽譜で著作権登録されたようです。下記の楽譜は著作権登録した楽譜のうち侵害を主張する部分です。

 

(9th Cir.の判決より)

全体はこんな感じです↓

(後述の司法省・著作権局の意見書より)

何が問題かというと、最終的に陪審員が類似性を判断しますが、陪審員に聴かせるのは、この楽譜を再現した音か、冒頭で聴いていただいた実際にリリースされた録音物の音か、です。おそらく大分印象が異なってくると思います。

Taurusを著作権登録した1967年当時は、1909年法ではSound Recordingは保護されていません。

1976年の大改正でSound Recordingが保護されるようになりました(実際は1972年の修正で保護の対象となっていたようです)。いずれにしても、この改正は遡及しないので、Taurusには影響しません。

しかしながら、遺産管理人はなんとかTaurusのSound Recordingを陪審員に聴かせようと試みたようで、依拠(access)の証明で用いることを主張したようです。

しかし、9th Cir.は、陪審員が依拠(access)と類似性(substantial similarity)とを混同するおそれがある、ということで、陪審員の不在の場で、遺産管理人側がJimmy PageにTaurusのSound Recordingを聴かせ、陪審員の臨席の場では尋問をさせるという工夫をしたようです。

この訴訟の過程で、トランプ政権下の司法省と著作権局が連名で、1909年法で登録した楽譜(Sheet Music)の著作権は、楽譜に表れた表現に限られ、Sound Recordingには及ばないというLed Zeppに与する意見書が出されたことも話題になりました。

Led Zepp側の対応もうまく、Taurusは知らないけど、Taurusが収録されたアルバムは持っていると証言し、依拠(access)を認め、この部分をやりすごしています。

2.について

Inverse Ratio Ruleは、米国著作権法の大家ニマー教授が提唱したようですが、依拠性が強ければ、類似性のハードルは低くなる、というような判断のようです。

多くの巡回裁判所はこれを採用していないようですが、6thと9thは採用していたようです。

今回は、9th Cir.で採用してきたInverse Ratio Ruleを採用しないということで、判例を変更しました。これが第一報でニュースになっていました。

いろいろは、9th Cir.の過去の判例から、このRuleの問題があったことを反省し、特に早々に採用を否定した2th Cir.の指摘をごもっともと受け入れたりしていました。

判決の中でも指摘していましたが、強力に音楽を流通させれば、依拠性は高くなり、そうすると類似性のハードルが下がるということなら、インターネットが発達しサブスクサービスなどで大々的流通できる人気の楽曲や巨大資本が支援する楽曲が有利になってしまう、という指摘は、なるほど、と思いました。
また、この理屈を推し進めれば、依拠性が強ければ、ほとんど似てなくても著作権侵害が成立しかねない、というおかしな結論にもなりえます。

そんなこんなで、9th Cir.の判例変更でした。

著作権非侵害(非類似)

地裁の判断をなぞって肯定しているので、目新しいことはないです。

それぞれの側から、音楽の学者(Miusicologist)が意見書を出していますが、遺産管理人側の学者も、”minor chromatic line”(本件では半音づつ順に下がっていくルート音)と関連するコードは一般的なものとして用いられたきたことを認め、Led Zepp側の学者も同じような見解です。
著作権局も、”diatonic scale”(全音階;7音で構成)や”chromatic scale”(半音階;12音で構成)、”arpeggios”(アルペジオ)は一般的な音楽の素材であるとしています。

ピアノやギターで弾けば、すぐ分かります。

しかし、時間がかかった訴訟でした。まだ連邦最高裁への上告はできるようなので終わりではないかもしれませんが、結論が変わることはないように思います。

9th Cir.判決は、最後に、

The trial and appeal process has been a long climb up the Stairway to Heaven.

と締めています。やはり階段と掛けたくなるんですね。

Stairway to Heavenはアコギでもいけますが、最近練習しているThe Lemmon Songは、アコギではいまいちピンと来ないです。

そういえば、Led Zeppelinを打ち間違えてLez Zeppelinと打って検索したところ、そういう名前のガールズバンドが存在することを知りました。

弁護士大橋卓生