孫楊ドーピング違反事件 CAS 2019/A/6148


ロンドンオリンピックで金2銀1銅1、リオオリンピックで金1銀1、世界水泳で金たくさんとっている中国のプールのスーパースター孫楊選手が、血液サンプルを破壊してドーピング違反となり、8年の資格停止処分となったと報道がありました。また、CASで初めて公開ヒアリングが行われ、中→英の通訳のミスがひどいなどでも話題となりました。

その孫楊ケースのCAS裁定が公開されたので早速読んでみました。長いので細かな争点は省いています。

事案の概要

主な登場人物・団体は基本的に略語になっているで、それを整理します。

FINA:国際水泳連盟。今回のドーピング検査の主体。
IDTM:International Doping Test&Management。
検体採取等を実施する団体で、今回のドーピング検査で
FINAから検体採取の委任を受け、孫楊選手から血液・尿
の検体採取を実施。
DCO:今回のドーピング検査のドーピング・コントロール・オフ
ィサー(女性)。過去に孫楊選手から検体採取を実施して
おり、孫楊選手とは顔見知り。
BCA:今回のドーピング検査の血液採取アシスタント(女性)。
DCA:今回のドーピング検査のアシスタント(男性)。
第4の人:IDTMの検体採取チームの運転手

孫楊選手の関係者では、母親、自宅警備員(ニートではない本物)、チームドクター2人、チームスタッフ。

今回のドーピング検査は、競技会外の抜打ち検査で、場所は、中国杭州の孫楊選手自宅にて、2018年9月4日の出来事です。

時間は22時〜23時でした(孫楊選手が事前申告していた検査可能な時間)。

孫楊選手から血液と尿の検体を採取するために、IDTMの検体採取チームは、第4の人の運転で孫楊選手の自宅に赴きました。

DCOは、孫楊選手に対し、IDTM発行のID及びFINAのIDTMに対する検体採取に関する一般的な委任状を示しました。

DCAは、孫楊選手に対し、政府発行のIDを示しました。

BCAは、孫楊選手に対し、Junior Nurseの専門技術資格証明書を示しました。

そのうえで、孫楊選手は、ドーピングコントロールフォームに署名し、2つの血液検体を提供し、ガラス容器に入れ、保管箱に納めました。

その直後、孫楊選手は、DCAが彼の写真を撮影していたことに気づきました。孫楊選手はその行動がプロフェッショナルではないと考え、IDTMの検体採取チームが提示した署名類を再確認させるよう求めました。その結果、孫楊選手がDCAが提供した情報では検体採取に不十分と考えたため、DCAは自ら又はDCOの同意を得て検体採取のミッションから外れることになり、DCAが唯一の男性メンバーだったため、尿検体の採取はできなくなりました。

さらに、孫楊選手と母親は、DCO・BCAの書類についても疑問を投げかけ、そしてアドバイスを求めるため、自身のサポートスタッフに電話連絡をしました。
すぐに、孫楊選手のチームドクター(Dr. Ba Zhen)がやってきて事情を聴き、彼の上司のドクターに電話で相談した。また、孫楊選手は、中国代表チームのリーダーにも電話で相談しました。

孫楊選手の取り巻き(医師や代表チームのリーダー)は、IDTMの検体採取チームが示した書類は、WADAが要求している基準に合致していないと結論づけ、DCOは採取済みの血液検体を持ち帰ることはできないと伝えました。

DCOは、孫楊選手に対し、血液検体を自身に取り戻すことは、検体採取に従わなかったとして重大な結果をまねくおそれがあることを警告しました。

しかしながら、孫楊選手らからのプレッシャーの下、DCOかBCAが保管箱からガラス容器を取り出し、孫楊選手に手渡してしまいました。

孫楊選手は取り巻きに、自身の血液検体を除いて壊れた容器をDCOが持ち帰れるようにガラス容器の1つを壊すよう指示しました。
これを受けて、自宅慧敏は血液検体の入ったガラス容器をハンマーで壊しました。この際、孫楊選手は、懐中電灯でガラス容器を照らすことにより、警備員の行為をサポートしていました。

さらに、孫楊選手は、DCOがいるところで、ドーピングコントロールフォームを破ってしまいました。

こうして、この日、IDTMの検体採取チームは、孫楊選手から血液・尿検体いずれも採取できませんでした。

この日、孫楊選手の要請で、Dr. Ba Zhenは、DCAが看護資格の証明書しかださず、BCAが居住者IDしか出さなかったため、ドーピング検査関連の証拠がなく、検体採取が実施できなった旨を用紙に書留、Dr. Ba Zhen、孫楊選手、DCO、DCA、BCAが署名をしました。

報道では、孫楊選手が血液サンプルを破壊したように言われていますが、正確には自宅警備員に壊させ、それを幇助していたようですね。

FINAの処分

この日の出来事は、IDTMからFINAに報告され、2018年10月5日にFINAは、孫楊選手に対し、検体採取拒否及びドーピングコントロール不当の改変(FINA DC 2.3及び2.5違反)を主張しました。

FINAのドーピング・コントロール・パネルは、2019年1月3日に決定を出しました。

結論は 違反なし でした。

理由は、ざっくりといえば、以下のような感じです。

  • 検体採取要員が示すべき書類は、少なくとも検体採取機関と検体採取に関連する人の関係を明らかにするものでなければならない。
  • 各自が身分証等を提示した際、DCA、BCAは自身の身元の分かるIDを示しましたが、IDTMとの関係が明らかになる書類を示さなかった。
  • このため孫楊選手には、WADAの検査に関する国際基準(Interational Standard Testing Investigations; ISTI)及びFINA DCに定める適切な通知(アスリートに接触した場合に行うべき通知)がなされていないから、検体採取手続は無効であり、孫楊選手にFINA DC違反はない。

これに対して、2019年2月14日に、世界アンチドーピング機構( WADA)が、FINAの処分についてスポーツ仲裁裁判所(CAS)に上訴しました。

正確には、WADAは、孫楊選手及びFINAを相手に、FINAの処分に不服を申立て、孫楊選手にペナルティを課すよう上訴しました。

CASの判断

ここからが本題です。

CASにおける仲裁手続は、英語か仏語で実施されます。この件では英語で実施されました。

問題となったヒアリングでの通訳については、当事者の合意で、孫楊選手側が通訳会社を決定し、WADA・FINAの同意を得て通訳者を決定することになりましたが、報道にもあるように通訳がめちゃくちゃだったようです。

裁定書の中に、CASの判断者であるパネルは、通訳・翻訳の質に失望した、と明記するくらいです。なお、この問題は、特に選手証言については、事後的に別の独立した通訳会社によって通訳されて調書を作成したようです。

細かいところは省きますが、WADAは、主位的にドーピング・コントロールの不当な改変(FINA DC 2.5違反)、予備的に検体採取の拒否(FINA DC 2.3違反)という主張です。

パネルが判断したポイントをまとめると・・・

1  選手はドーピング違反を犯したか
1-1 一般的な委任状のほかにIDTM検体採取チーム個々人に対する
個別の委任状は必要か
1-2 個別の委任状にはDCO・DCA・BCAの氏名が記載されてなけ
ればならないか
1-3 DCO、DCA、BCAはそれぞれ孫楊選手に対し、ISTIに従って
自身の身元を特定しか
1-4 検体採取手続の不遵守について正当な理由はあったか
1-5 FINA DC 2.5違反に必要な”Intent”はあったか

2 ドーピング違反をした場合の適切な処分は

1  選手はドーピング違反を犯したか

孫楊選手は、警備員に血液検体の入ったガラス容器を壊すよう指示したこと、ドーピングコントロールフォームを破ったこと、サポートスタッフとの行為により、DCOが持ち帰るべく採取した血液検体の持ち帰りを妨げ、尿検体の採取を妨げたこと、については争いがありませんでした。

主要な争点は、FINA処分でも問題となった、IDTM検体採取チームはISTIにより求められている通知をしたか、でした。この争点は、上記のとおり、1-1から1-3の3つの細かい争点が設定されました。

1-1 個別委任状は必要か

パネルは、ISTI 5.4.1 b)、ISTI 5.4.2 b)及びISTI 5.3.3を引用し、特に5.3.3.の文言から、FINAからIDTMに対する一般的な委任状だけで十分であり、IDTM検体採取チームの各員に個別の委任状まで必要になるとは理解できないと判断しました。

ちなみに、5.3.3はこんな感じです。

Sample Collection Personnel shall have official documentation, provided by the Sample Collection Authority, evidencing their authority to collect a Sample from the Athlete, such as an authorisation letter from the Testing Authority. DCOs shall also carry complementary identification which includes their name and photograph (i.e., identification card from the Sample Collection Authority, driver’s licence, health card, passport or similar valid identification) and the expiry date of the identification.

一般的な委任状を提示し、個別の委任状を提示しないというのは、ドーピング検査における数万件の検体採取における実務にも一致しているとしています(パネルは孫楊の代理人に、これら数万件も無効というのか?と意地悪な質問をしたようです)。

また、孫楊選手は、これまで多数ドーピング検査を受けてきましたが、自身の主張する個別の委任状が提示されたことを証明できなかったようです。

1-2 個別委任状に各自の氏名が記載されている必要はあるか

1-1の結論から、1-2も不要という判断です。

1-3 検体採取メンバーは孫楊選手に対し、ISTIに従って自身の身元
    を特定したか

この争点は、孫楊選手側が、検体採取メンバー誰もISTIに定める身元確認の要件を満たしていない、という主張に対するものでした。

パネルは、いずれも満たすと判断して、孫楊選手の主張を排斥しています。

DCOについては、ISTI5.3.3によれば、 身元確認のために要求された書類は、氏名と写真を含むものとされており、IDTM発行のIDはこれらを含むとしています。

DCAについては、ITCI上に存在しない役職で、IDTMで使っていた用語です。
このため、パネルは、DCAの役割を認定したうえで、DCAは、ISTI上のシャペロンに該当するとし、本件における役割は、尿の採取の立ち会いで、孫楊選手に対する通知は含まれてない、と認定しました。

この場合、ISTIでは、シャペロンのID提示も必要としていないことから、ID提示は不要としました。

BCAについても、ISTI上に存在しない役職で、IDTMで使っていた用語です。DCAと同様に、パネルは、本件におけるBCAの役割は、静脈穿刺(せんし)を行うことであり、ITSIにおけ血液採取Blood Collection Officer(BCO)と認定しました。

中国においては、BCAが孫楊選手に示したJunior Nurseの専門技術資格証明書では、血液を採取する資格があることを示すには不十分だったようで、Practice Nurse Certificateが必要とされるようでした。

もっとも、このBCAは、Practice Nurse Certificateも有していました。パネルは、ISTIでは、血液検体を採取する時に当該資格を証明することまで要求していないと判断しました。

以上1-1〜1-3までの検討結果から、パネルは、IDTMの検体採取チームは、ISTIに定められるすべての適用可能な通知要件を満たしていると判断しました。

1-4 検体採取手続の不遵守について正当な理由はあったか

孫楊選手側は、次の①〜③のような事実があったため、不遵守に正当理由あり、という主張です。

①DCAによる選手の写真撮影

パネルは、検体採取要員として不適切な行為であるが、検査全体を中止すべき事情ではないとしました。

②DCOによる不遵守の警告のミス

ITSI 5.4.1 (e)iii (Annex A 3.3) によれば、DCOは、検体採取手続に従うこと(競技者は不遵守により競技者に課される可能性のある措置について告知されるべきである)を伝えなければならないとされています。

この点、FINA処分の決定において、補足理由で、FINA DCパネルは、DCOは、選手が理解できる言語で、上記のことを伝えなければならないと解し、DCOが、特定の行為が違反にあたるおそれがある、というリスクを説明するだけでは、不十分と判断しています。

これに対し、CASパネルは、DCOは孫楊選手に対し、検体採取手続不遵守の結果科される可能性のある措置を繰り返し警告し、それを試みていた、と認定しました。

③採取手続を終了し、血液サンプルを破棄するというDCOの提案

孫楊選手側は、上記をDCOが自発的に行ったと主張しましたが、パネルは、選手主導で行ったものと認定しました。

以上から、孫楊選手側が主張する事実は、検体採取手続不遵守の正当な理由にはならない、としました。

1-5 孫楊選手の”Intent”の有無

FINA DC 2.5違反(ドーピング・コントロールの不当な改変)は、”Intentionally”(意図的)になされなければなりませんので、その有無が問題となりました。

パネルは、次の事実から、孫楊選手の行動は意図的に検体採取手続を妨害しようとしたもので、必然的に”Intent”を含むものであると判断しました。

  • DCOの繰り返しの警告にもかかわらず、孫楊選手は、密封された血液検体を彼に渡すよう要求し続け、DCOが持ち帰ることを防いだこと
  • 血液検体の入ったガラス容器を破壊したこと
  • DCOが血液検体を持って施設を離れないようにするために、ドーピング・コントロール・フォームを破ったこと
  • 引き裂くことによって、意図的にプロセスを妨害しようとしたこと

2 違反を侵した場合の適切な処分は?

ふぅー、以上のとおりで、FINA DC 2.5違反という結論に達しました。

次に、どのような処分を課すかが問題となります。

2-1 資格停止処分

FINA DC 2.5違反の場合、資格停止期間は4年間です(FINA DC 10.3.1)。

パネルは、FINA DC 10.6の軽減事由は認められず、”Intentionally”であるから、FINA DC 10.5.2(重大な過誤・過失なし)も適用されずないとしています。

そして、孫楊選手は、2014年6月に3か月の資格停止処分(競技会検査で検体から禁止物質の検出)を受けています。

WADAの規則及びこれに準拠するFINA DCにおいて、2回目の違反は重く処分されることになります(10.7.1)。

具体的には、次の(a)〜(c)のうち最も長い資格停止が適用されます。
(a) 6 か月間
(b) アンチ・ドーピング規則に対する1回目の違反につき、課され
た資格停止期間の 2 分の 1
→ 孫楊選手の場合、1.5か月
(c) 2 回目のアンチ・ドーピング規則違反を、あたかも初回の違反
であるかのように取り扱ったうえで、それに適用可能な資格停
止期間の 2 倍
→ 孫楊選手の場合、8年

6か月、1.5か月、8年のうち、最も長い8年が適用されることになるです。

さすがに、パネルも、8年は重すぎると思う、と裁定書の中で指摘していますが、規則上、裁量で減刑はできないため、規則どおり8年としています。

孫楊選手は、8年の資格停止は人格権を侵害する旨主張しているため、パネルは、重いとはおもうけど、2回目の違反が重く処分されるルールであり、慎重に行動すべきであった、と自らをフォローしています。

2-2 ドーピング違反(2.5違反)後の成績の剥奪

ドーピング違反が発生した以降の競技成績が剥奪される可能性があり(FINA DC 10.9)、パネルは、この点について検討しています。

2019年世界水泳(韓国・光州)で金2を達成しているため、この成績が剥奪されるかが注目されています。

パネルは、先に述べたとおり、8年は厳しすぎると判断しており、CASの先例においても成績の剥奪は資格停止と同等と評価していることもあり、この間にドーピング違反を行っていないこと、FINAが違反発覚後も暫定的資格停止を行っていないこと(大会参加を認めている)から、成績の剥奪は行わない、と結論づけました。

最終結論

ということで、FINAが処分決定をした2019年1月3日から8年間の資格停止です。

 

ベストプラクティス等とITSIの乖離?

以上みてきたとおり、主要な争点は、WADAが定める国際基準ISTIに照らして、検体採取チームが自身の身元や権限をどの程度まで証明すべきか、というところでした。

この点については、WADAがISTIとは別に作成するガイドラインで、ベストプラクティスとして検体採取要員の個々人について詳細を伝える旨が記載されているようです。また、中国のアンチドーピング機構(CHINADA)においては、実務上。検体採取に関係する者個々に証明書と委任状を出しているようです。IDTMの実務においても、ISTIが要求する基準以上の書類を出すこともあったようです。

この点について、パネルは、そうした点を認めながら、ISTI基準はそこまで要求していないと判断しています。孫楊選手あるいは取り巻きが、ベストプラクティス基準とした実務に慣れていたのであれば、今回のIDTMの検体採取チームが提示した書類が十分でない、という現場における判断もありえるのかな、と思います。

ただ、そうであれば、孫楊選手側としては、異議を記録させたうえで、検体採取に応じ、事後速やかに検体採取の違法性を争う手はあったと思います。それをしないで、採取した検体を破壊したり、ドーピング・コントロール・フォームを破ったりするのは、明らかにやりすぎだろうと思います。この点は、パネルも繰り返し指摘しています。

改正WADA規程との関係

2021年1月から施行予定の改正WADA規程には2.5違反の場合でも軽減される場合があり、また、2回目の違反の場合に一定範囲から資格停止期間をパネルが決定できるようになります。しかし、当たり前ですが、これを先取りして軽減する、というような判断をパネルはしていません。

もっとも、改正WADA規程27.3によれば、次のとおり、改正WADA規程が施行された時点で資格停止期間中の場合、改正WADA規程の観点から、資格停止期間を短縮するための機会が与えられます。

With respect to cases where a final decision finding an anti-doping rule violation has been rendered prior to the Effective Date, but the Athlete or other Person is still serving the period of Ineligibility as of the Effective Date, the Athlete or other Person may apply to the Anti-Doping Organization which had Results Management responsibility for the anti-doping rule violation to consider a reduction in the period of Ineligibility in light of the 2021 Code. Such application must be made before the period of Ineligibility has expired. The decision rendered by the Anti-Doping Organization may be appealed pursuant to Article 13.2. The 2021 Code shall have no application to any anti-doping rule violation case where a final decision finding an anti-doping rule violation has been rendered and the period of Ineligibility has expired.

8年の資格停止は短くなる可能性は残っているようです。

もっとも、その前に、本人は、スイスの裁判所に、この裁定を提訴するようです。パネルが厳しすぎると判断したことが、スイスの裁判所にどう映るか興味深いです。

JACK ANDERSON教授のコメント

会員になっているオーストラリア&ニュージーランドスポーツ法学会でお会いしたメルボルン大学のJACK ANDERSON教授がこのケースについて、LawInSportsで評釈を書かれています。

今後展開としてスイスの裁判所への提訴について、成功する見込みは低いだろうとのことです。孫揚選手の代理人は過去に3度CAS裁定をスイスの裁判所に持ち込んでいるようです。

日本でもそうですが、仲裁は、国の司法裁判所を使わず、第三者(仲裁機関)の判断による解決を図るものなので、仲裁の結果が不都合だからといって、簡単に司法裁判所に提訴できるものではありません。仲裁自体が不公平に実施されたとか、仲裁判断が公序良俗に反するなど特別な理由が必要になります。

教授によれば、(そのような事実があれば)ヒアリングが不公平に行われたこと、ヒアリングにおける通訳の問題などを理由にできるかも、としています。

同様に8年の資格停止が厳しすぎるということも提訴の理由になりうるとしていますが、WADA規程やFINA DCがそのような制裁を義務付けていたことから、成功しないのではないか、と予測されています。

もう1点、孫揚選手側は、アンチドーピング規程では選手側に厳格責任が課されているが、検査手続の全ての管理面に関して厳格に遵守するために検査側にも厳格責任を課すべきだと主張していましたので、スイスの裁判所への提訴でも理由の一つにするであろう、と。ただ、スイスの裁判所が、アンチドーピング政策の核心に触れる議論に踏み込むことはしないのではないか、と見ています。

また、FINAに対しては、ガバナンスを見直し、ドーピング等の問題を調査・訴追するため、陸上テニスのように独立したインテグリティ・ユニットを構築すべき、としています。

弁護士大橋卓生