拒絶された”Liverpool”


昨年、プレミアリーグのLiverpool FCが、英国の知的財産庁(UK IPO)に、”Liverpool”をサッカー関連の商品・役務の商標として登録を申し立てたところ拒絶された、という事案がありました。

商標は自他識別機能を果たすものでなければならなず、地名は、一般的に、商品の産地や役務提供の場所を示すもので、自他識別機能を有しないとされ、登録拒絶事由となっています(商標法3条1項3号)。

UK Trade Marks Actでも同じように登録拒絶事由となっています。

ところが、同じプレミアリーグのChelsea FCは”Chelsea”を、Tottenham Hotspurは”Tottenham”を、Southampton FCは”Southampton”を、それぞれサッカー関連の商品・役務の商標として登録していました。ほかにも、”Arsenal”や”West Ham”などの地名もプレミアクラブがサッカー関連の商品・役務の商標として登録していました。

これらのクラブは、なぜ地名のみを商標登録できたのでしょうか。

その理由は、日本でも英国でも同じですが、登録拒絶事由に該当する商標でも、使用することによって特定の事業者の商品・役務を表すものとして自他識別機能が生じた場合には、商標登録可能とされています(特別顕著性。商標法3条2項、UK Trade Marks Act Article 3 (1))。

たとえば、「夕張メロン」は、産地を表す「夕張」とメロンを表わす一般名称である「メロン」を組み合わせただけであり、自他識別機能を有しないとして、商標登録が拒絶されました。

その後、生産者のブランディングの努力によって「夕張メロン」が特別顕著性を得て商標登録されるに至りました。

プレミアリーグのクラブは、日本のプロ野球とは異なり、地名で呼称・表示されるため、その地名だけでサッカー関連の商品・役務の自他識別機能が生じうることは容易に想像されるところです。

そこで、サッカー関連の商品・役務として商標登録できていない地名を探したところ、”Liverpool”以外に”Manchester”がありました。

ただ、”Manchester”の場合は、同じ地名を有するチームが2チームあるので、どちらか一方の商標として自他識別機能を発揮しないというのは理解できます。

“Liverpool”には、Liverpool FCのほかにEverton FCがありますが、Livepoolを冠しているのはLiverpool FCです。Everton FCは”Everton”(Liverpoolの一地域)を商標登録しています。
そうすると、”Manchester”とは異なり、”Liverpool”から想起するチームはLiverpool FCだけということになり、商標登録が認められてもよいように思います。

なぜ、UK IPOが”Liverpool”を拒絶したのか、決定が全文公開されていないので分かりませんが、クラブチーム発表によれば、都市として”Liverpool”の地理的重要性が拒絶の主な理由になっているようです。

なお、リバプール市長や市民やファンもLiverpool FCによる”Liverpool”商標の登録に反対していたようです。”Liverpool”の名称をクラブチームが独占することに対する反発のようです。

ところで、Liverpool FCが”Liverpool”商標の登録を試みたのは、グッズの海賊版対策のようですが、同クラブは、UK IPOの決定を受入れ、上訴しない旨を表明しています。

こうした動きを見ていますと、他のプレミアクラブが地名を商標登録する際にどういう動きがあったか、とても気になるところです。

弁護士大橋卓生