Taylor Swiftの”Shake It Off”と盗作疑惑


ヒット作品には盗作訴訟がつきものです。

Taylor Swiftの”Shake It Off“(2014)もその例外ではありませんでした。問題とされたのは、サビの部分の次の一節。

“Cause the players gonna play, play, play, play, play
  And the haters gonna hate, hate, hate, hate, hate.”

異議を述べたのは、3LWの”Playas Gon’ Play“(2001)に詞を提供した2人のソングライター。この曲の中の次の一節が盗作されたのだと。

“Playas, they gonna play, and haters, they gonna hate.”

短い歌詞の一節の盗用が問題となりました。意味的には「プレイする人はプレイし続け、嫌う人は嫌い続ける」ということかと思います。

連邦地裁では、原告らが盗作された述べる一節は、2001年当時ありふれたものであり、短すぎて創作性がない、というような判断で、訴えを却下しました。

ありふれたものという判断は、他のアーティストも類似の表現を使っていたことから指摘されているようです。

  • “Players only love you when they’re playing” (Fleetwood Mac ‘Dreams’ 1977)
  •  “So playa hataz hate me”  “Why you wanna playa hate on me?” ( Luniz ‘Playa Hata’ 1995)
  • “Playas in the house can you feel me / Got these playa haters lookin’ at me silly”(Sir Mix-A-Lot ‘Man U Luv ta Hate’ 1996)
  • “We have the playas, and we have the playa haters”, Notorious B.I.G. ‘Playa Hater’ 1997)
  •  “Don’t hate the player”(Ice-T ‘Don’t Hate the Playa’ 1999)

これに対し、控訴審9th Cir.の判事は、約100年前の連邦最高裁の判例・・・

“It would be a dangerous undertaking for persons trained only to the law to constitute themselves final judges of the worth of pictorial illustrations, outside of the narrowest and most obvious limits.”

を引用して、地裁の判断は時期尚早だったと。
引用した判例がいわんとすることは、芸術の価値を裁判官が最終判断することの危険性を指摘するものと思われます。

短い一節の盗作が問題になった事案は、日本でもあったなぁ、と思い出したのが、槇原敬之vs松本零士の銀河鉄道999事件(東京地判H20.12.26)です。

槇原さんがChemistryに提供した楽曲「約束の場所」の歌詞の次の一節が問題となりました。

「夢は時間を裏切らない 時間も夢を決して裏切らない」

松本さんは、銀河鉄道999に出てきた次に台詞に似ていると主張しました。

「時間は夢を裏切らない,夢も時間を裏切ってはならない」

この訴訟は、著作権関係の部分は却下となっていて、名誉毀損の部分で判断が出ています。

名誉毀損部分は、盗作騒動に関するテレビ番組で行った松本さんの発言が問題となり、一部の発言が名誉毀損にあたると判断されました。

問題となった発言の真実性(違法性阻却)の中で、複製権侵害に通じる(i)アクセスの容易性や(ii)両表現の類似性が判断されています。盗作、すなわち、複製権侵害を指摘しているので、複製権侵害に該当する事実があれば、その発言は真実であり、名誉毀損の違法性が阻却されるということになります。

(i)アクセス容易性
松本さんの指摘する台詞が登場した雑誌等が証拠として提出されていますが、裁判所は、各雑誌等の媒体の内容からすると、読者はかなり限定されるとし、槇原さんがそれら媒体に接したという証拠はなく、興味を抱く性質でもなく、読者の範囲に含まれない、と認定しました。

(ii)両表現の類似性
裁判所は、「時間」「夢」「裏切らない」を用い、1文と2文で主語と目的語を入れ替えて反復させている点で共通し、共通部分は、両表現の特徴的な部分と認定しました。
両表現とも短いですが、ありふれた表現という判断はしていません。

もっとも、2文で松本さんの方は「裏切ってはならない」としているのに対し、槇原さんの方は「決して裏切らない」としている点で印象が相当程度異なると認定し、両表現は類似していないと判断しています。

具体的には「裏切ってはならない」と命令形にすることで、裏切ることが少なからずある(努力しても夢が叶わないことがある)が、そのようなことはあってはならないという願望を表している、としています。

「決して裏切らない」と断定形にすることで、裏切ることはない(努力すれば夢は必ず叶う)ことを表現している、としています。

そして、短い文章であるから、この語尾の相違は大きいなどと判断しています。

“Shake It Off”の事案は、この事案よりも、更に短い文章で、主語・述語・目的語も同じです。おそらく陪審員が判断することになると思いますが、どんな判断が出るか興味深い事案です。

弁護士大橋卓生