eSportsプレーヤーとNeighboring Rights


eSportsプレーヤーの権利まわりで、日本で議論をみかけないのが、パフォーマンスに関する権利関係です。

ヴァーチャル空間に関する権利の問題なので、伝統的なスポーツでは基本的に問題とならない部分ですが、調べた限りでは、米国では7,8年前から議論となっており、いくつか論文も発表されているところです。

eスポーツとリアルスポーツとで大きく異なるところは、リアルスポーツの対象は野球やサッカーなどそれ自体著作物ではありませんが、eスポーツの対象はビデオゲームという著作物という点です。

端的にいえば、リアルスポーツのプレーヤーとは異なり、eスポーツプレーヤーは、著作物を実演等する者として実演家の著作隣接権が生じるのではないか、という問題がeスポーツの選手契約やマネジメント契約を検討していて考えるところです。

リアルスポーツでも振付のあるフィギュアスケートなんかは、振付という著作物を演じるものですので、フィギュアスケーターが著作権法上の実演家にあたる場合があるとされています。

著作権法上、実演・実演家は、次のように定義されています。

  • 実演(著2①3号)
著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること(これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含む。)をいう。
  • 実演家(著2①4号)
俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者及び実演を指揮し、又は演出する者をいう。

細かな解釈論は省きます。スポーツ選手の実演家該当性の解釈論について興味ある方は、金沢工業大学虎ノ門大学院平成30年度修了の院生さんが、このあたりの要件論について修士論文を書いています。

結論として、フィギュアスケーターの場合、オリンピックなどでの演技は得点を競い合うものであり実演に該当しないが、アイスショーでの演技は実演に該当する、というもの(加戸守行著・著作権法逐条講義)。

芸能的性質を有するかどうかでの区別ですが、なんか分かったような分からないような感じがします。

eスポーツプレーヤーにあてはめれば、大会でのパフォーマンスは実演ではなく、大会以外でのゲーム配信のようなものは実演にあたる、ということになりそうです。

が、ここでふと思いました。フィギュアスケーターは自分の生身で演技するのに対して、eスポーツプレーヤーは、マウスやキーボードを操作している動きが実演にあたる訳ではなく、ビデオゲーム内の空間に存在する彼/彼女が操作するアバターの動きが実演、ということになるのでは?と。

それでいろいろ調べていきますと、米国で、ゲーム内のアバターは誰のものか?という議論がされていました。いくつか判例もあって、なかなか興味深いです。長いので全部読めていませんが。

ビデオゲームは、映像面から映画の著作物とされています。その映画の著作物に登場するアバターを操作しているのはeスポーツプレーヤーです。米国の議論では、アバターの所有者は誰かから始まって、アバターを操作して得ることによるビデオゲームの映像の著作権者は誰かなどが議論されてます。いろいろ有益な示唆もありそうです。

興味深い議論として、アバター操作者の著作者性のところで、”Machinema”というゲームのグラフィックエンジンを用い、ゲームに実装されたリプレイ機能やカメラアングル機能等を利用して映画を作る手法が紹介されていました。

例えば、Call of Dutyを使って製作した”Machinema“があります。

この映像を製作したプレーヤーは、二次的著作物の著作者として保護されることになり、それとの関係でアバターを操作しているeスポーツプレーヤーも著作者になるのではないか?と。まだ読み込みが足りていないので、良く読み込んでみたいと思います。

とりあえず、日本の著作権法を前提に考えれば、劇場用実写映画に出演する俳優が立派な演技をしたところで著作物にはならず、実演として実演家の著作隣接権が与えられることになると思います。

アニメ映画では、登場人物に台詞を吹き込む声優も実演家として保護を受けます。

そうだとすれば、ビデオゲームにおいて登場人物を操作するeスポーツプレーヤーを実演家と解することもできるように思います(前述のとおり大会での保護はなしです)。

ということで、フィギュアスケーターと同じような扱いでいいのかな、とは思っています。

ただ、フィギュアスケーターやeスポーツプレヤーを実演家として扱うことのメリットがあるのか、についても検討しなければならないと思います。

その意味では、Work for hireで権利が吸い上げられてしまう米国俳優のように労働組合を作って権利を確保する手法、いわゆる選手組合を作る方が実効性があるのではないかと思います。

弁護士 大橋卓生