eSportsとスポンサーシップ


eSportsの市場調査会社Newzooの2019年度のレポートによれば、eSportsの全収入$1.1B(約1169億円)に占めるスポンサー収入の割合は42%とされ、もっとも大きな収入となっています。

スポンサー収入について、大学院の授業で、どのようなスポンサーメリットが付与できるか、それを可能にする法的権限があるかなど検討してもらっていますが、考えていくといろいろあって面白い分野です。

Naming Rights

リアルスポーツでもお馴染み手法です。日本ではスポンサーメリットの一つのような感じで短期間で金額もそれほど大きくないイメージですが、米国ではスタジアム等の建設資金の調達の手段として用いられることが多く、権利料も多額で長期間の契約となります。

米国フィラデルフィアを本拠地とする”Overwatch“のプロチーム”Philadelphia Fusion“の本拠地のアリーナ”Fusion Arena”(6万㎡・3500人収容)を、Comcast Spectator社が既存のアリーナをリノベートする形で建設することが発表されました。

建設費用は$50M(約53億円)とのことですが、この度、チームから新アリーナのネーミングライツを$50Mで売るという発表がなされました。

プロeSportsチームが専用スタジアムを持つというのは、日本の現状からすると、びっくりです。

ところで、ネーミングライツは、命名権と約されますが、知的財産権にはこのような権利はありません。物の所有者がその物の名前を自由に付けることができるのと同じです。

施設所有者がその施設に名前を付ける行為とその名前で施設を運用する行為に財産的価値を見いだしてネーミングライツが成立しているものと思います。単に名前を付けるだけ、という訳ではないので、その名称での施設の維持管理なども含むんで複数形のライツになっていると思います。

当事者間の契約で成立する取引ではありますが、スタジアムやアリーナなどはランドマークにもなりますので、街中の表示や駅名などの変更が伴うため、関係自治体等との調整が必要になります。

また、オリンピックはクリーンベニューの原則があり、施設にスポンサー表示はできません。FIFAもスポンサーとの関係でネーミングライツされたスタジアムはNG(例:日産スタジアムと呼べず、横浜国際総合競技場が使用される)となっています。

もうすぐ開催されるラグビーワールドカップも同様で、日産スタジアムが使われますが、名称は横浜国際総合競技場が使われています。

スタジアム・アリーナの用途を踏まえ、ネーミングライツが使えない場合も明確に挙げて契約しておかないと、契約違反となってしまうことに留意が必要です。

Virtual Stadium Right

つい先日発売されたElectronic Arts(”EA”)の”Madden NFL 20“で、Pizza Hutが史上初のVirtual Stadium Rightを取得したというニュースがありました。

EAのNFLシリーズは、NFLやNFLPAからライセンスを受けているアメフトのゲームです。先のTattoo訴訟や選手のパブリシティ権訴訟も経験しています。

Virtual Stadium Rightは、表現が大げさですが、要するにゲーム中にPizza Hut Stadiumを登場させるというものです。当然、Madden NFL20を用いたeSports大会では、このスタジアムを使用することで、その露出を確保するというもの。面白い試みです。

基本的に知的財産権ではないというところはネーミングライツと似ています。

ゲームはEAが作っていますが、NFLがライセンスしているので、契約関係は少し複雑になります。Pizza Hutがこの権利を獲得できたのは、NFLの公式スポンサーとなったから、という事情もあるようです。

Madden NFL20は、NFLの開幕に合わせてリリースされていますが、このゲームを使ったeSports大会は、開幕戦、プレーオフ、スーパーボール、ドラフトのタイミングで開催されることになっています。リアルスポーツの盛り上がりに合わせて、eSports大会も実施するといううまいやり方です。

eSportsはビデオゲームですが、そのヴァーチャルなフィールドはリアルなスタジアムと同様、多くの人の目に触れることになりますので、広告価値を生むことになります。

こうしたIn-Game Ad(ゲーム内広告)は既に存在しています。例えば、EAのFIFA19。ゲーム中のサッカーフィールドのピッチサイドに企業広告が掲載されています(FIFAやプロリーグ等のライセンス商品なので広告は限定されています)。

In-Game Adの一類型ですが、ゲーム内のキャラクターのスキン(外観)にスポンサーのロゴを入れたり、スポンサー仕様のスキンを作り、これを一般ユーザーに販売するということもスポンサーメリットとして考えられます。

eSportsとスポンサーシップ

eSportsのスポンサーになろうとする場合、リアルスポーツとは違った留意が必要な部分もあります。

まず、誰のスポンサーになるか、どのような露出があるのかを把握する必要があります。

eSportsのチームといってもタイトルによって選手の構成が変わりますし、チーム全体であればどのようなタイトルのチームがあるかも確認する必要があります。また降格制度のあるeSportsリーグもありますので、リーグのルールも踏まえる必要があります。
eSportsのトッププレーヤー個人の方が広告効果としては高いとされているようですが、プレーヤー個人のスポンサーの場合、チームのスポンサーとの競合の問題が生じます。
ほかにもスポンサードの対象としては大会主催者やゲームパブリッシャーなどもありますが、それぞれどのような役割で、どこに露出の機会が見いだせるか検討する必要がありま。

eSportsの主要な視聴者が、デジタルネイティブであることに隆する必要があります。PCと同時に、スマフォやタブレットなど2ndスクリーン、3rdスクリーンも駆使します。こうしたデバイスにスポンサーの露出ができることになっているかも留意が必要です。

弁護士 大橋卓生