eSportsとドーピング


2017年に、ディズニー傘下のスポーツ専門チャンネルESPNが、リーグ・オブ・レジェンドのプロリーグに参加してる欧州と北米のトッププロ選手33人を対象にプロ生活に関するアンケート調査を実施しました。

基本的にゲーミングハウスで他の選手と共同生活をすることになるようです。チームのパフォーマンスを上げるのに最高の環境という反面、プライベートな時間がないようです。

北米選手の平均基本年俸:$105,385(約1100万円)
欧州選手の平均基本年俸:€76,136(約900万円)

トッププロでこれくらいみたいです。スポンサー等で大きく稼ぐ感じですね。

伝統的なアンチ・ドーピング

ESPNが実施他アンケートの中に、アンフェタミン等を使用している選手を知っているか、という問いに、約27%の選手が”YES”と回答していました。

eSportsも伝統的なスポーツと同様、ドーピングを規制しています。

特に2015年、ESL傘下の”Counter-Strike: Global Offensive”のプロリーグで生じたドーピング・スキャンダルが転機となったようです。

ある選手がインタビューの中で、Adderall(アデロール)が広く使用されていることを明言しました。このインタビューの後、実際にAdderallの使用を認めた選手が現れ、プロチームのコーチが選手Adderallを渡しているのを見たという目撃証言も出て、大きな問題となりました。

AdderallやRitalin(リタリン)という薬物です。

Adderallは、注意欠陥多動性障害とナルコレプシーの治療に用いられるもので、アンフェタミンを含み、中枢神経を興奮させる作用があり、集中力が高まるとされています。
日本では、覚せい剤に分類されるので、覚せい剤取締法の規制対象になります。
WADAの禁止表では、競技会時の禁止薬物(特定物質でない興奮薬)に挙げられています。

Ritalinは、メチルフェニデートという精神刺激薬で注意欠陥多動性障害の治療薬です。アンフェタミンと同じ効能があるようです。
日本では、麻薬及び向精神薬取締法の規制対象になります。
WADAの禁止表では、競技会時の禁止薬物(特定物質である興奮薬)に挙げられています。

外国のeSportsで主流のドーピング物質を日本で所持したり使用すれば、ドーピング違反となるだけでなく、刑事罰もかかってきます。コンプライアンスが厳しく問われる現在では、一度、これら物質で違反に問われると選手としての復帰は難しいのではないでしょうか。

何よりもこれらの物質は中毒性があるものなので、薬物中毒になってeSportsどころではなくなってしまいます。

ところで、eSportsのドーピング検査の実態がよく分かりませんが、eSports界全体を通じたアンチ・ドーピング体制は構築されていないように思います。

そうすると、LoLのあるリーグで資格停止になった選手が、別のゲームのeSportsリーグに移籍して活動できる、ということが可能になってしまうような気がします。

eDoping

伝統的なスポーツでも、自転車競技のように道具を使う競技で、道具に細工を施すMechanical Doping(機械ドーピング)があります。

eSportsは、PCやインターネットを利用しますので、機械ドーピングのようにプレイヤー以外の部分で、ずるをすることができてしまいます。

具体的なeDopingとしては、マウスやキーボードの設定変更(連射を容易にする、1回のクリックで複雑な動作を可能にするなど)、ソフトウェアの改ざん(ゲーム内の壁などの遮蔽物をスルーして相手を見ることができるなど)、対戦相手のPCの動作を遅くするDDoS攻撃等々があるようです。

こうしたeDoping対策としては、基本的に、サイバーセキュリティシステムで技術的にファイルの改変の有無など問題を発見していく努力が続けられています。マウスやキーボードなど機器類については、主催者が管理・提供するということでも対応はできると思います。

eDopingのうちソフトウェアの改ざんやDDos攻撃などはサイバー犯罪で対処するということも考えられます。

刑法234条の2(電子計算機損壊等業務妨害)

不正アクセス禁止法

大会要項などにチート行為はこうした犯罪に該当するおそれがある旨明記しておくことも有用かと思います。

Integrity of eSports

eSportsがSportsとして認知されるためには、Integrityの維持が不可欠です。

eSportsは、伝統的なアンチ・ドーピングに加えて、eDopingの対策も重要な課題となります。特にサイバーセキュリティの対策は結構重いように思います。

高額賞金のかかった大きな大会では、チート行為への強い動機があります。不正のトライアングル理論を前提にすれば、こうした動機を実現させないため、不正を起こす機会をなくしていくことが重要で、これにより正当化に対する心構えがかわってくるように思います。

eDopingと並んで大きな問題になっているMatch Fixing(八百長)もeSportsのIntegrityを考えるうえで重要ですので、後日、まとめます。

弁護士大橋卓生