eSportsとプロ選手契約


いつくかeSportsのプロ選手契約書(英文)を検討する機会があったので、覚書的に留意点をまとめてみました。適宜アップデートすると思いますので、話半分でみてください(^^ゞ

1 対象となるゲームの特定

eSportsの対象となるゲーム毎に、ゲームメーカーやプロリーグが定めるルールが異なりますので、どのゲームのプロとして契約するのかを明記する必要があります。

2 契約期間

1〜2年が多いようです。

LoLではLCSルールとして最長3年という制限を設けていたりします。

選手を長期間の拘束する契約は、日本の民法上、公序良俗違反(90条)で無効とされるおそれがあります。

また、ゲームによっては、プロ選手協会が存在し、リーグ等と協定を結んでいる場合もあります。例えば、Coutner-Strike Professional Player’s AssociationやNA LCS Players’ Association(LoL)など。

契約期間に関しては、延長のオプション権やRight of First refusalをチームに与えるものや自動更新などバリエーションがあります。

3 選手が提供する役務

主たるものとしては、①チームが指定する大会出場及び練習の参加、②コンテンツ制作(TwithやYoutube配信動画など)、③チームのマーケティング活動、④スポンサー対応(スポンサー商品の着用など)、⑤SNS上での活動など。

役務提供の合計時間や日数を具体的に定めることもあります(これに応じて有給休暇的な条項を設ける場合もあります)。

4 選手の権利・義務

権利としては、Equipment(PCやネット環境など)の提供は重要です。また、先に述べた有給休暇的な条項も権利の一つとしてあります。

なお、選手個人のスポンサーを獲得できるか、できる場合はその手続を定めることがあります(チームスポンサーとの競合防止)。

義務としては、①法令や契約のほかチームの行動規範、チームの指示、所属リーグのルールなどの遵守義務、②SNSのポリシーの遵守義務、③他のスポーツへの参加など危険行為の禁止、④ベストパフォーマンス、⑤ドーピングやチーティング、ハラスメント、差別の禁止などいろいろあります。

チームの行動規範やSNSポリシーは契約とは別に定められていることもあります。

5 報酬・費用

月給制と歩合の組合せが多いようです。

賞金付大会で獲得した賞金については選手が100%取得する場合や一定比率をチーム取得する場合などバリエーションがあります。

上記以外にはコンテンツ配信やスポンサー獲得、商品化などで得た収入を選手がすべて得るか、一定比率でチームとシェアするなどこちらもバリエーションがあります。

選手が獲得したスポンサー料の80%をチームが獲得するという契約があり、選手が無効を訴えて争いになっている事例もあります。

億単位で稼いでいるプロ選手がそんなに多くなく、スポンサー収入が大きいことに鑑みると、月給はそんなに高くなく、歩合部分の比率を大きくしているように思います。

あと、報酬の支払時期の明記も大切ですね。

選手の活動に関する費用は、チームが負担するのが一般的なようです。

6 専属性

契約したチームが参加するリーグや大会のみに出場し、他のチームやリーグに参加しないことを明記して、専属性を担保しています。

なお、契約期間終了後に競業を制限するNon Competive Clauseは、LoLでは禁止されています。Call of Dutyでも契約期間が満了すれば、Free Agentとしてどのチームと契約できるとしています。欧米のプロスポーツの流れから、一般的なことと思います。

7 トレード

チーム間で選手のトレードが認められているゲームがあります(LoL、Call of Dutyなど)ので、契約上の地位の譲渡ができる旨の条項が設けられています。

LoLでは、トレード制限条項の有無を申告することになるので、トレードには選手の同意を要するとする定めも可能と思われます。

8 知的財産権

選手の肖像権は、チームがプロモーションやマーケティング目的で無償で使用できる旨定められるのが一般的です。

また、契約に基づき、選手が創作したコンテンツの著作権等の処理も明記しておく必要があります。

ゲームプレイを公衆に配信することは実演にあたると思いますので、実演家の著作隣接権の処理も必要ですね。特に配信を録画する場合、ワンチャンス主義が働くので、選手にとっては二次利用も含めて権利処理をする必要があります。

9 契約違反

国際的な契約になることが多いので、違反の場合の措置や損害賠償の範囲や手続など割と細かく定めます。罰金を設けることもあります。日本の民法でいえば、違約金の定めということになると思います。

10 選手のステータス

一般的に、選手は、労働者ではなく、独立した自営業者であることを明記します。

日本法で考えると、実体が雇用ではないか否かが重要になります。その意味で、ゲーミングハウスに住まわせて、24時間/365日、チームの管理下に置くという態様がどのようなに評価されるか興味があるところです。

11 保険

プロ選手にとって怪我などで稼働できなくなった場合の補償が気になるところです。リーグ等の障害補償の制度は聞いたことがありませんので、チームとの契約で保険をかけてもらうか、それがかなわなければ自分でかけるほかありません。

12 契約の終了

ここも国際契約のように細かく規定されるところです。

13 仲裁

契約から生じる紛争ですが、裁判所ではなく、仲裁を選択することが多いです。米国の選手契約では、AAAかJAMSの仲裁が指定されています。

14 準拠法

チームの所在地法が選択されています。

15 その他

レプワラ条項、秘密保持条項、補償条項など国際契約で一般的に盛り込まれる条項は入っています。

内容自体特筆すべきものはありませんが、スポーツ一般の契約と同じように、そのスポーツを規律するリーグの規約などを踏まえる必要があります。

eSportsが伝統的なスポーツと異なるのは、ゲームを作ったメーカーによっても規律されるという点です。このあたりはゲーム毎にまちまちなので、契約のチェックもゲーム毎に適用されるルールを特定して行う必要があります。

どなたか各種ゲームとeSportsルールを整理して、必要なルールをまとめて欲しい、と思う今日この頃です。

弁護士大橋卓生