Marilyn Monroeと死後の・・・


今回は、死後の話。

Elvis Presleyにあって、Marilyn Monroeにないものは?

Forbes誌は、以下のリンクにあるように、毎年、亡くなった著名人の収入のトップ10みたいのを公表しています。
The Highest-Paid Dead Celebrities Of 2018

不動の1位はマイケル・ジャクソンで収入も$400M(約432億円)
と圧倒的に大差をつけています。

プレスリーは堂々の$40M(約43億円)で2位ですが、モンローは$14M(約15億円)と8位となっています。

これら収入の源泉は、音楽アーティストの場合は楽曲の著作権収入もありますが、主としては肖像等の利用(商品化やCM利用など)許諾によるものです。

そうした肖像等の利用許諾を支える権利がパブリシティ権です。日本でも、ピンクレディ事件最高裁判決H24.2.2等で認められている権利です。

ただこのパブリシティ権は、その人が亡くなった後も認められるか、というのが問題です。日本でも死後のパブリシティ権について議論されてはいますが、具体的に裁判になったケースはまだありません。

アメリカの場合、パブリシティ権の扱いが州によって異っています。そもそも、パブリシティ権が成文法化されている州は20にも満たなかったと思います。

成文法を持つ州の中でも、死後のパブリシティ権を認める州とそうでない州があり、死後のパブリシティ権を認める州でも保護期間等が異なったりします。

そして、死後のパブリシティ権が認められるか否かは、その人が死亡した時にどこの州の住人であったかで決まるようです。

プレスリーは、出身地であるテネシー州メンフィスにGracelandと呼ばれる大邸宅を持っていて、ここで亡くなっています。テネシー州のパブリシティ権法は死後のパブリシティ権を認めています。
おそらく、死後のパブリシティ権を認める州の中で最も強力で、使用し続ける限り、死後のパブリシティ権を認める、というもの。

一方、マリリン・モンローは、結論として死後のパブリシティ権はありません。2000年初頭に大きな訴訟が展開され、最終的にこの結論に達しました。

ことの発端は、映画「7年目の浮気」の地下鉄のシーンの写真などマリリン・モンローの写真の著作権を持つ写真家の会社が、Tシャツにマリリン・モンローの肖像写真を使用させたところ、マリリン・モンローの遺産を管理する財団(Marilyn Monroe LLC)からライセンスを受けた権利管理会社(インディアナ州)がパブリシティ権侵害を主張して、インディアナ州の連邦地裁にマリリン・モンローの肖像写真の使用の差止等を請求しました。
インディアナ州のパブリシティ権法は、死後のパブリシティ権を100年間認めています。

他方、写真家側は、マリリン・モンローが最後に住んでいたニューヨーク州の連邦地裁に、財団はマリリン・モンローのパブリシティ権を有しないことの確認を求める訴訟を提起しました。
ニューヨーク州のパブリシティ権法は、死後のパブリシティ権を認めていません。

この訴訟は複雑でカリフォルニア州の連邦地裁にも継続していたようです。カリフォルニア州のパブリシティ権法は、死後のパブリシティ権を70年認めています。

最終的に、マリリン・モンローは、死亡時、ニューヨーク州の住人であったということで、ニューヨーク州法が適用されて、マリリン・モンローの死後のパブリシティ権は存在しない、ということになりました。

ただ、インディアナ州法ないしカリフォルニア州法が適用されたとしても、死後のパブリシティ権は認められなかったと思います。

カリフォルニア州のパブリシティ権法は1984年に制定、インディアナ州のパブリシティ権法は1994年に制定されているのですが、マリリン・モンローが亡くなったのは1962年です。数十年遡って法律が適用されるといことはないと思います。連邦裁判所もそのような判断を示していたようです。

それでもなお、マリリン・モンローは、冒頭のForbes誌の順位でも年間15億円を稼いでいます。

その理由は、びっくりする後日談がありまして、マリリン・モンロー財団は、写真家の会社を買収していました。

現在では、財団の収入は、マリリン・モンローの写真の著作権ライセンスがメインになっているようです。

ところで、インディアナ州法やカリフォルニア州法は、遡及して適用されないという話がありましたが、遡及した事例もあります。

2016年に亡くなったプリンスですが、亡くなった際、彼はミネソタ州の住人でしたが、ミネソタ州にはパブリシティ権法は存在しませんでした。

しかし、ミネソタ州は、彼が亡くなった2か月足らずで、Personal Rights in Names Can Endure ACT=PRINCE法を制定し、死後のパブリシティ権(最低50年)を設けるとともに、遡及適用を認める、というもの。

パブリシティ権法が制定されている州は、著名な歌手・俳優等を輩出したところが多いと思います。

亡くなったスターをホログラムで再現してコンサートを行ったり、映画に登場させたり、と亡くなったスターを全盛期のとおりに再現できるようになってきました。死後のパブリシティ権は、日本でも重要な権利になってくるように思います。

弁護士 大橋卓生