火事と原盤


原盤に関する大きなニュースが続いています。

2008年にラスベガスのユニバーサルスタジオで発生した火事が、当時、ユニバーサル・ミュージックで制作した原盤を保管していた倉庫にも及び、数多くの原盤を焼失した、とのことです。

この件で、ユニバーサルミュージックを相手に、トム・ペティ財団を含むアーティストらが、ユニバーサルミュージックと契約した現役アーティスト及びその遺族を代表してクラスアクションを提起しました。

何故、今頃?という感じですが、記事や訴状を読んで、事の重大さを実感しました。

訴状によれば、火事が起きた当時、ユニバーサルミュージックは、次のような声明を出したそうです。

“we only lost a small number of tapes and other material by obscure artists from the 1940s and 50s.”

ところが、どうやらこの声明は嘘だったようです。

2019年6月11日のニューヨークタイムスの記事”The Day Music Burned“に詳しく書かれていますが、焼失した原盤のアーティスト名だけをみても・・・

Ray Charles, Sammy Davis Jr., Fats Domino, B.B. King, Quincy Jones, Neil Diamond,  Mamas and the Papas, Joni Mitchell, Carpenters, Elton John, Lynyrd Skynyrd, Eric Clapton, Eagles, Don Henley, Aerosmith, Yoko Ono, Tom Petty and the Heartbreakers, Police, Sting, R.E.M., Janet Jackson, Bobby Brown, Guns N’ Roses, Nirvana,  Sheryl Crow, Eminem・・・

などまだまだあります。リリースされたバージョンの原盤だけでなく、未発表曲やアウトテイクの原盤も含まれるようなので、ファンからしたら戦慄ものです。

さらには、これどうするの?と思われるような、レジェンド級アーティスト(上記アーティトも十分レジェンド級ですが)の原盤も焼失しているようです。

Decca Record時代のLouis Armstrong, Duke Ellington, Al Jolson, Bing Crosby, Ella Fitzgerald, Judy Garlandの原盤
Chess Record時代の Billie Holiday, Chuck Berry , Muddy Waters, Howlin’ Wolf, Willie Dixon, Bo Diddley, Etta James, John Lee Hooker, Buddy Guy and Little Walterの原盤

すごい喪失感です。

まだまだ続きます。ジャズの原盤も焼失しています。

Impulse Record時代のJohn Coltrane, Duke Ellington, Count Basie, Coleman Hawkins, Dizzy, Gillespie, Max Roach, Art Blakey, Sonny Rollins, Charles Mingus, Ornette, Coleman, Alice Coltrane, Sun Ra, Albert Ayler, Pharoah Sandersなどの原盤

さらには・・・

Bill Haley and His Comets’ “Rock Around the Clock”の原盤
Bo Diddley’s “Bo Diddley/I’m A Man”の原盤
Impressions’ “People Get Ready”の原盤

なども焼失しているようです。

都合、約50万もの原盤が焼失したようです。

ユニバーサルミュージックは、火事当時、新聞雑誌各紙に、先に述べたような声明を出し、こうした損失をアーティストに伝えなかったようです。

訴状によれば、他方で、ユニバーサルミュージックは、保険会社から莫大な保険金を受け取ったとされています。

ちなみに、原告のアーティストら$100M(約1086億円)超の損害賠償請求をしています。

時効の問題が出てきそうですが、被害を受けたアーティストは損害を被ったこと知らなかったと主張して消滅時効にかかっていないと主張しています。

歴史的な原盤の焼失なので、お金で解決できるようなものではないと思いますが、ユニバーサルミュージックのガバナンスを正すためにも、懲罰的損害賠償を課すのにふさわしい事案のように思います。

日本のレコード会社も、これを契機に、原盤の保管について点検し、このような事態が生じないようにしていただきたいと思います。