adidas 3本線商標


アディダスの3本線商標が、EUで無効とされたというニュースが話題になっています。

EU裁判所のプレスリリースによれば、無効とされたのは次の商標です。

2014年にEU知的財産庁(EUIPO)が上記商標を登録したところ、ベルギーの会社が異議を申し立て、これを受けてEUIPOが登録を取り消したことについて、アディダスがEU裁判所へ上訴していました。

 

ところで、アディダスの3本線の識別力ですが、日本でも過去の裁判例で争われています。

EUでの争いとは異なりますが、特許庁で指定商品を「運動用特殊靴」等として次の商標が登録されたことについて、アディダスが登録の無効を訴えた、というものです。

アディダスは日本国内200超の登録商標を有しているようで、次のような図形も商標登録されています。

(登録第1587778号)   (登録第4376378号)

先の4本線の商標は、アディダス商標と混同するおそれがある、ということで商標登録が取り消されました(知財高判H24.11.15)。
この判決文の中で、裁判所は「我が国において運動靴の取引者、需用者に、3本線商標ないしスリーストライプ商標といえばアディダス商品を想起するに至る程度に、アディダスの運動靴を表示するものとして著名であった」と判示しています。

こうしたアディダス商標の著名性を前提に、運動靴に用いられた場合、4本線と3本線の違いは大きなものではないなどとして類似性を認め、上記結論に至っています。

著名性を認める前提として、アディダス側は、3本線商標を採用した昭和24年から現在に至るまで3本線商標を使用した靴の態様や販売数、広告など多量の証拠を提出しているようです。不正競争防止法2条1項2号の著名性立証みたいな感じです。

現在のところ、日本の特許庁には、EUで無効とされた3本線商標は出願されていないようです。

日本の商標法では、「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標」は識別力なく、商標登録できません(商標法3条1項5号)。

商標審査基準では、図形の場合は、例として、1本の直線、が挙げられています。

この基準からすると3本の直線は識別力あり、と判断されることになると思います。当然、上記知財高裁の判断も根拠にできると思います。

調べていたら、アディダスは、立体商標として3本線の入ったジャージズボンを登録していました(第4522863号)。位置商標のなかった時代に登録したものです。

紳士服のコナカが、運動用特殊靴等で、次の商標を登録しています。アディダスは、上記を含む一連のアディダス商標と類似するということで、登録異議の審判を提起したようですが、特許庁は類似しない、ということで、登録が維持されています。

裁判所へ上訴しなかったのは、コナカが使用しているのは、SUIT SELECTのロゴのようですので、実質的な問題はない、という判断でしょうか。

話は元に戻りますが、EUでのアディダスの3本線商標は、その保護をひろげるために「商品にあらゆる向きで付けられる等間隔で並んだ同一幅の3本の平行線」の登録をチャレンジしたもののようです。

ちなみに、EUIPOのデータベースで、3本線の図形商標を検索してみたところ、下記のような三本線商標は登録されていましたこれに識別力があるとすると、今回問題となったアディダスの3本線商標はどうでしょうか。

ありふれたものとして登録できない商標でも、使用することによって、特定の企業を出所とする製品であることを特定するものとなり、これにより自他識別機能を発揮することがあります。日本の商標法では、特別顕著性(商標法3条2項)などと言われています。

特別顕著性を認めた事例として、古いですが、「アマンド」(東京高判S59.2.28)や「セロテープ」(大阪高判S40.9.29)などがあります。

EU裁判所が、アディダスがEU全域で使用を通じて3本線商標の識別力を獲得したと証明できていない、と指摘しているのは、上記のような意味合いなのかな、と思います(出願したものとは異なる態様−背景が黒で白の3本線など−の使用証拠は排斥されたようです)。

いずれにしても、アディダスは、上訴して争う余地はあるようなので、まだ、確定ではないです。上訴審の判断がどうなるか興味深いです。

アディダスの調べていたら、EUIPOでは、米マクドナルドが「Big Mac」の商標を失ったりしていたのですね(こっちも興味深いとです)。

弁護士 大橋卓生