Back to the…デロリアン vs デロリアン


デロリアン(De Lorean)といえば、映画”バック・トゥ・ザ・フューチャー”シリーズに登場するタイムマシンとなった車でおなじみ。最近では、映画”レディ・プレーヤー1”にも登場しています。

バック・トゥ・ザ・フューチャー2の公開年の1989年に、ジョン・デロリアン(自動車メーカー”デロリアン”の創業者)とユニバーサル・ピクチャーズは、①デロリアンの姿態、②DeLoreanの名称及び③DMCロゴの使用に関して独占的なライセンス契約を締結しています。

その契約書の写しを確認したところ、①〜③全てをカバーする内容になっていました。その使用範囲は、玩具やノベルティ、飲食物等のグッズやCMタイアップで、その売り上げの5%のロイヤリティをユニバーサル・ピクチャーズがジョン・デロリアンに支払う、という内容でした。

ジョン・デロリアンが2005年に亡くなった後に問題が生じました。

ジョン・デロリアンの遺産は、ジョン・デロリアン・エステート(代表は妻のようです)が管理していたようです。

他方、デロリアンは、ジョン・デロリアンによって創業された自動車メーカーですが、1982年に倒産したようです。このため、ユニバーサル・ピクチャーズは、前記のとおり、創業者のジョン・デロリアン個人とライセンス契約を締結したと思われます。

その後、1995年に別人がDe Lorean Motor Companyを設立して、デロリアンを復刻させていました。

2014年に、ジョン・デロリアン・エステートは、De Lorean Motor Companyに対し、DMCのマークなど知的財産権を不当に使用していると訴訟を提起しました。この訴訟は、2015年にDe Lorean Motor CompanyにDe Loreanの名称等の使用を認める和解が成立したようです。

なぜ、ジョン・デロリアン・エステート側がこの和解に応じたのだろうと調べてみました。

2015年にLow Volume Motor Vehicle Manufacturers Actが制定されていました。これは、25年以上前に生産された車のレプリカの生産を可能とするものです。この法律に基づくレプリカ生産の他の要件として、レプリカを生産する車の商標等の権利者や承継者から各種権利のライセンスを受けていること、というものがありました。

おそらく、ジョン・デロリアン・エステートは、この法律によってデロリアンのレプリカを生産を認めることとし、De  Lorean Motor Companyと前記の和解をしたのだろうと思います。

しかしながら、De Lorean Motor Companyは、この和解に基づき、ユニバーサル・ピクチャーズと交渉し、その結果、ジョン・デロリアンがユニバーサル・ピクチャーズと締結したライセンス契約に基づくロイヤリティを得ることに成功しました。

推測ではありますが、ジョン・デロリアン・エステートにとっては、そこまで考えていなかったのでしょう、De Lorean Motor Companyに対し、ユニバーサル・ピクチャーズから得たライセンス契約に基づくロイヤリティを返還するよう提訴しました。

しかしながら、先日、NJ州の連邦裁判所は、ジョン・デロリアン・エステートとDe Lorean Motor Companyの和解にはジョン・デロリアンとユニバーサル・ピクチャーズとのライセンス契約について明示されていないが、De Lorean Motor Companyに①デロリアンの姿態、②DeLoreanの名称及び③DMCロゴの使用を認めるものだと認定して、ジョン・デロリアン・エステートの訴えを退けています。

決定書によれば、和解書に、上記①から③の使用を認める包括的な文言が記載されており、その使用についてジョン・デロリアン・エステートは訴追しない旨記載されていることが主な理由のようです。

判決のニュースだけを見ると、自動車会社の権利を、創業者の未亡人が自ら相続したとして争った事案かと思ったのですが、いろいろ調べてみるとそうではないことが分かりました。

契約書など法的効力が生じる文書について、きちんと文言の射程を考えてワーディングをしないと思わぬ落とし穴に落ちるという教訓のような事案ではないかと思います。

同じような事案で思い出すのが、円谷プロとタイ人のソンポート氏とのウルトラマン(初代〜タロウ)等の海外利用権の契約がありますね。

弁護士大橋卓生