「弁護士大橋卓生」カテゴリーアーカイブ

UEFA チャンピオンズリーグ新シーズンとCovid-19ルール – CAS 2020/A/7356 –

欧州では、新シーズン(2020/2021)が開幕しました。コロナ渦が収まらない現況で、どのリーグもコロナ対策ルールを設けて対応しています。

セリエAでは、ユヴェントス対ナポリ戦が、ナポリの選手やスタッフに感染者が出たことで遠征が止められて、中止になるというニュースがありました。

UEFAチャンピオンズリーグ(CL)でも同じようなことが生じており、新コロナ対策ルールの適用をめぐって争いがありました。

UEFAはCL新シーズンに先だって、2020年7月15日に、既存のルールよりも優先するものとして、Covid-19特別ルール(コロナ新ルール)を設けました(Annex I)。主な内容は次のとおりです。 続きを読む UEFA チャンピオンズリーグ新シーズンとCovid-19ルール – CAS 2020/A/7356 –

Banksy “Flower Bomber”商標とEUIPO

以下の作品は、2003年にパレスチナのベツレヘムの壁に描かれた”Flower Bomber”とか”Flower Thrower”とか”Love is in the Air”などと呼ばれている作品です。Banksyを代理する会社Pest Control Office Limited社(UK)は、2014年に上記作品をEUIPO(欧州連合知的財産庁)に商標登録の申請をし、登録されていました。主として次のような商品やサービスを指定していました。

塗料、サングラス、録音済CD、娯楽目的のコンピュータゲーム、印刷物、ステーショナリー、写真、ポスター、書籍、ハンドバッグ、財布、鞄、建築素材、衣服、カーペット、おもちゃ、教育・訓練、娯楽、美術展、アートワークデザイン等

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パラマウント判決の終焉

ハリウッド黄金期といわる1930年台〜40年台ですが、その黄金期を支えた制度ーブロックブッキングや一律の料金設定、劇場への不透明なクリアランスなどやこれらを支える大手スタジオの映画館保有ーが反競争的として、司法省が反トラスト法(アメリカの独占禁止法)のメスを入れた時代でもありました。

その結果、当時最大手だったパラマウント・ピクチャーズの名称を冠したパラマウント判決が出され、映画館の保有が禁止されるなど映画興行ビジネスの変革を余儀なくされました。

70年超が経過した2020年、司法省はパラマウント判決の廃止を決定し、8月に裁判所はこれを認める決定を出しました。

興味深い決定でしたので、決定書を読んでみました。

■ パラマウント判決

対象となったのは、次の映画会社です。

Paramount Pictures
20th Century Fox
Leo’s/MGM
Warner Brothers
RKO Radio Pictures

以上の5社は、ビッグファイブと呼ばれ、 ハリウッドにスタジオ 続きを読む パラマウント判決の終焉

プールスイマー(ペルー)ドーピング事案:FINA2020.8.19

ロンドン五輪のペルー代表だったペルーの水泳選手のドーピング事案です。これが2度目の違反となります。

最初の違反は、2016年です。
2015年のパンアメリカ大会で実施されたドーピング検査で検体からS1のスタノゾロール(アナボリックステイロド)が検出され、4年の資格停止が課されています(CASに上訴するも棄却)。
最初の資格停止期間の4年は、2019年7月11日に終了しています。

ペルー水泳協会は、この選手を2019年7月26日〜8月11日にペルーで開催されたパンアメリカ大会のペルー代表として選出していますが、次のとおりすぐにドーピング違反が発覚しました。

2019年6月30日 競技会外検査(検体1)
2019年7月7日 競技会外検査(検体2)
2019年7月12日 競技会検査(検体3)

2019年7月31日にFINAはこの選手に対して検体1および検体2の 続きを読む プールスイマー(ペルー)ドーピング事案:FINA2020.8.19

スタンドアップパドルボードの行方:CAS2018/O/5830

マンCのFFP違反裁定に続いて、CASから興味深い裁定が出ています。

急成長しているStand-Up Paddleboard(SUP; スタンドアップパドルボード)というスポーツを巡って、どちらがこのスポーツを統括するかについて、国際サーフィン連盟(International Surfing Association; ISA)と国際カヌー連盟(International Canoe Association; ICF)とが争っていました。

ISAの主張によれば、もともとはハワイのサーファーが考案して広まったスポーツのようで、サーフィンの一種別と認識しているようです。

ICFの主張によれば、ICFが統括するスポーツの定義にパドルを使ったアクティビティも対象としているとのことです。

上はカヌー、下はサーフィンというなぞなぞの問題みたいなスポーツです。

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マンチェスター・シティFFP違反事案:CAS2020/A/6785

2020年2月にUEFAが、FFP違反を理由にマンチェスター・シティ(マンC)に対し、チャンピオンズリーグ等UEFAのクラブ選手権への出場を2年間停止する等の処分が出され、大きなニュースになりました。

それから約5か月、CASは、マンチェスター・シティのUEFAのクラブ選手権への出場を2年間停止する処分を取消す等という裁定が出されました。

この大きな結論の違いが、なぜ生じたのかが気になって、CAS裁定を見てみました。裁定を読むとFFPを理解していないと、理解できないところがあるので、FFPを読みました。FFPを読むと・・・という感じで、関連規則が理解できたので、まとめてみることにしました。

そういえば2019年にはACミランがFFP違反でUEFAから2シーズンの出場停止処分等を課されましたが、CASで和解して1シーズンの出場停止にとどまっています(CAS2019/A/6083,6261)。

■ FFPとは

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Lawson Case : CAS 2019/A/6313

以前にざっとまとめた、陸上のローソン選手のドーピング違反に関するスポーツ仲裁裁判所(CAS)の裁定が公開されていました。

この裁定の内容について、賛否両論あるるようなので、CASの裁定書を読んでみました。

《概要》

2018年 4.11 ドーピング検査→陰性
5.20 セイコーゴールデングランプリ(大阪)に出場
(ドーピング検査→陰性)
6.2 米国アーカンソー州スプリングデールにて、競技会外検査実施
6.14 上記競技会外検査で採取したA検体からEpitrenbolone検出
6.21 USATFナショナルチャンピオンシップ(米国)に出場
7.13 ラバト(モロッコ)にて大会出場
7.17 ソットヴィル・レ・ルーアン(仏)にて大会出場
7.22 ロンドン(英国)にて大会出場
8.3 国際陸上連盟のAthletic Integrity Unit(AIU)が選手に陽性通知
    →暫定的資格停止
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昇降格ルールの変更とCovid-19 -ベルギー編-

英国、フランスに続いて、ベルギーのプロサッカーリーグでもコロナと昇降格ルールの変更が問題となっています。

ベルギーの国内リーグは、1st Divison A(16チーム)−1st Division B(8チーム)− National Division(セミプロ16チーム)から成るようです。

昇降格ルールは、1Aから1B降格は最下位の1チーム、1Bから1Aの昇格とはトップ1チーム、1BからNDへの降格は下位3チームです。

今回、ベルギーのプロサッカーリーグは、かなり迷走したようです。

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キプサング選手/ドーピング事件:SR/009/2020

ロンドンオリンピック・マラソン銅メダルで、元世界記録保持者のウィルソン・キプサング選手(ケニア)が、ドーピング違反で4年間の資格停止となりました。この処分は、World Athleticsにおける処分ですので、英国のSports Resolutionが担当しています。

この判断に対してCAS(スポーツ仲裁裁判所)に上訴することが可能です。

キプサング選手は、警官らしいのですが、この4月に夜間外出禁止令に違反して、仲間と飲酒して逮捕されているようです

この事案、ドーピング検査で禁止薬物が出たのではなく、居場所情報関連義務違反及びドーピングコントロールの不当な改変という違反です。後者の違反は、先日、大きなニュースになった中国のプールのスパースター孫楊選手と同じ違反です。

アンチ・ドーピング機構側の違反立証及びアスリート側の反証ともに、客観的な証拠と証人の信用性が重要になります。

コロナの影響か、証人尋問はビデオ会議方式で実施されたようです。

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Enola Holmes vs Sherlock Holmes

サー・アーサー・コナンドイルのシャーロック・ホームズの小説の著作権は、日本では保護期間が切れてパブリックドメインになっているようです。ただし和訳版は残っていると思いますので、注意してください。

日本と保護期間が異なるアメリカでは、事情が違うようです。

1887年から1927年に創作された60作品のうち50作品は著作権の保護期間が切れているようですが、第一次世界大戦後に創作された10作品は2018〜2022年まで残っているようです。

アメリカの小説家Nancy Springer氏は、2006〜2010年の間に、シャーロック・ホームズの妹エノーラ・ホームズを主人公にした「エノーラ・ホームズの事件簿」シリーズ6作品を創作しました。

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