「アンチ・ドーピング」カテゴリーアーカイブ

キプサング選手/ドーピング事件:SR/009/2020

ロンドンオリンピック・マラソン銅メダルで、元世界記録保持者のウィルソン・キプサング選手(ケニア)が、ドーピング違反で4年間の資格停止となりました。この処分は、World Athleticsにおける処分ですので、英国のSports Resolutionが担当しています。

この判断に対してCAS(スポーツ仲裁裁判所)に上訴することが可能です。

キプサング選手は、警官らしいのですが、この4月に夜間外出禁止令に違反して、仲間と飲酒して逮捕されているようです

この事案、ドーピング検査で禁止薬物が出たのではなく、居場所情報関連義務違反及びドーピングコントロールの不当な改変という違反です。後者の違反は、先日、大きなニュースになった中国のプールのスパースター孫楊選手と同じ違反です。

アンチ・ドーピング機構側の違反立証及びアスリート側の反証ともに、客観的な証拠と証人の信用性が重要になります。

コロナの影響か、証人尋問はビデオ会議方式で実施されたようです。

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馬ドーピング事件:CAS 2020/A/6853

馬ドーピングといえば、2006年の凱旋門賞に出走したディープインパクトが3着に入るも、禁止薬物使用で失格となった事案が思い出されます。

WADA規程でも動物を使った競技について、動物のドーピングが想定されていますが、禁止物質等を含め国際競技連盟(IF)がWADA規程に沿ってルールを定めることとされています。

事案の概要

国際馬術連盟(FEI)に登録している障害馬術(jumping)のプロライダーS選手(スイス)は、”SAURA DE FONDCOMBE“号とともに、2017年10月にモロッコで開催された大会に参加して優勝し、ドーピング検査を受けました。

馬の血液検体が採取され、分析した結果、オピオイド系鎮痛薬で 続きを読む 馬ドーピング事件:CAS 2020/A/6853

ドーピング:ローソンCaseと藤森Case

孫楊Caseの後、CASからローソン選手(陸上)と藤森選手(水泳)のドーピング上訴仲裁の裁定が続きました。

両ケースでは、選手側は検査前日に食べたものに禁止物質が混じっていたと主張しており、意図的に摂取したものではないとして原処分の軽減を求めたものでしたが、CASでの結論が対照的でしたので、それぞれの原処分の内容をみてみました。

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孫楊ドーピング違反事件 CAS 2019/A/6148

ロンドンオリンピックで金2銀1銅1、リオオリンピックで金1銀1、世界水泳で金たくさんとっている中国のプールのスーパースター孫楊選手が、血液サンプルを破壊してドーピング違反となり、8年の資格停止処分となったと報道がありました。また、CASで初めて公開ヒアリングが行われ、中→英の通訳のミスがひどいなどでも話題となりました。

その孫楊ケースのCAS裁定が公開されたので早速読んでみました。長いので細かな争点は省いています。

事案の概要

主な登場人物・団体は基本的に略語になっているで、それを整理します。

FINA:国際水泳連盟。今回のドーピング検査の主体。
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eSportsとドーピング

2017年に、ディズニー傘下のスポーツ専門チャンネルESPNが、リーグ・オブ・レジェンドのプロリーグに参加してる欧州と北米のトッププロ選手33人を対象にプロ生活に関するアンケート調査を実施しました。

基本的にゲーミングハウスで他の選手と共同生活をすることになるようです。チームのパフォーマンスを上げるのに最高の環境という反面、プライベートな時間がないようです。

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Vijay Singh ドーピングケース

米国でツアー34勝を誇るレジェンドゴルファーVijay Singh(ビジェイ・シン)のドーピングに関する訴訟が和解終結しました。

5年前に、Vijay Singhは、Sports Illustrated誌の記事の中で、Deer antler sprayを使用している旨を述べました。Deer antler sprayには、WADAが禁止物質としているインスリン様成長因子-1(IGF-1)がごく微量ですが、含まれていました。

Deer antler sprayは怪我の治療などに用いられるステロイド代替物のような商品のようです。

PGAツアー側は、Vijay の尿検体を検査することなく、この記事を 続きを読む Vijay Singh ドーピングケース

欧州人権裁判所  ドーピング居場所情報システムを合法と判断

フランスのアスリート及びサッカー、バスケット、ラグビー選手の労働組合が、ドーピング居場所情報システムが欧州人権条約8条(プラバシー及び家庭生活に関する権利)に違反するとして欧州人権裁判所に提訴していました。

世界アンチドーピング機構(WADA)が定めるアンチドーピング規程(WADA規程)により、トップアスリートなど一部のアスリートは、抜き打ちのドーピング検査の対象とされ、日々の居場所情報をWADAが提供するADAMSというシステムに登録することが義務づけられています。

抜き打ち検査があるかもしれないということはドーピング防止に有用だとしても、アスリート側からすれば、日々監視されているように感じるだろうことは無理ないように思います。そこで、フランスではアスリートがこうしたシステムが人権を侵害しているとして提訴したようです。

しかしながら、欧州人権裁判所は、全会一致で8条違反とならないと判断しました。

要は、抜き打ち検査がドーピング防止に必要で、このことは公益であり、このために8条の権利が制限されることは正当である、ということのようです。

弁護士 大橋卓生

参照記事