ファウルボール事故 Foul ball Injury


はじめに

プロ野球を野球場で何回か観戦したことがあれば、ファウルボールが観客席に飛び込んで来て、冷やっとした経験があるのではないでしょうか。

プロ野球などで使うボールは、ゴムボールではなく、硬球といわれる硬いボールです。

試合中には、多数のファウルボールが観客席に飛び込んでいます。プロの投手が投げ、プロの打者が打ったボールですので、かなり速く鋭い打球が飛来します。こうした打球が観客に当たると、打ちどころが悪ければ、骨折、失明、内臓破裂など重大な傷害が発生し、時には死に至ることもあります。

厄介な問題は、ファウルボールがいつどこに飛んでくるかが分からないことです。究極的な安全対策は、野球場のグラウンドを鳥カゴのようにネットで覆ってしまって、観客席にファウルボールが飛び込まないようにしてしまうことです。

もっとも、臨場感を求める野球ファンも多く、近年ではアメリカの野球観戦のようにグローブ持参で観戦する人も増えています。こうした野球ファンからは、ネットがあることで野球が見づらいという声もあり、ネットを低くしたり、ネットを取り払ったフィールドシートを設ける野球場も存在します。

近年のファウルボール事故の裁判例は、次のとおりです。

foulball_lawsuit

ファウルボール事故と野球場の安全性

ファウルボールが観客に当たる事故(ファウルボール事故)が生じた場合、まず、問題になるのは、事故が生じた座席との関係で、その野球場の設備に問題がなかったか、という点です。

民間の野球場であれば、土地の工作物責任(民法717条)、公共団体の野球場であれば、国家賠償法第2条の責任が追求されることになります。

土地の上に設置された野球場は、土地の工作物に該当し、所有者や占有者(所有者から野球場を賃借した者など)は、土地の工作物の設置・保存(管理)に瑕疵があり、それによって他人に損害が生じた場合、その損害を賠償しなければなりません。
国家賠償法第2条も文言は異なりますが、内容は同じです。

「工作物の設置・保存の瑕疵」とは、「通常有すべき安全性を欠いていることをいう」とされています。

「通常有すべき安全性を欠いている」とはどのようなことを言うかについては、後述するとおり、ファウルボール事故の裁判例の判断が分かれることになりました。

工作物責任を負う典型的な例としては、例えば、バックネットに穴が空いていて、そこからボールが飛び込み観客にあたったような場合です。ただ、このような事故は極めて例外的です。

ほとんどのファウルボール事故は、内野のフェンスやネットを飛び越えて観客席に飛び込んできた場合に生じています。
単純にネットが低かったということだけで、「通常有すべき安全性を欠いている」というのは困難です。確かにそれぞれの事故だけを見れば、例えば、5mのネットがあれば防げたとは指摘できますが、5mのネットを設けても、そのネットを越えるファウルボールで事故が生じた場合に、5mネットを設けていたから安全対策として十分であったというようにはならないと思います。

ネットを何メートルにすればよいかは、各球場の仕様も異なりますし、上記のようにファウルボールがどこに飛び込むかもわからないため、具体的な基準を設けることはかなり困難なのではないかと思います。

ちなにみ、野球場の安全基準を示しているものとしては、(公財)日本体育施設協会が発刊している『屋外体育施設の建設指針』があり、これによれば、「野球場の防護柵の高さを3メートル程度とすること」とされています。

これまでのファウルボール事故訴訟の裁判例では、単純にネットの高さだけで安全性の有無を判断するのではなく、諸事情を総合的に判断しています。設備というハード面だけではなく、安全対策というソフト面も考慮の対象となっています。

野球場が「通常有すべき安全性」とは

工作物責任が問題となったの裁判例(上表1,3,4)は、いずれも、「瑕疵」(通常有すべき安全性にかけること)の有無は、当該施設の構造、用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合的に検討して、個別具体的に判断すべき、としています。
そして、いずれの裁判例も、プロ野球の試合が頻繁に行われる球場施設としての一般的性質に照らして検討されなければならない。

しかし、被害者の請求を棄却した楽天ファウルボール訴訟の裁判例(仙台地裁)と、被害者の請求を認めた札幌ドームのファウルボール訴訟の裁判例とでは、考慮要素の扱いが異なっています。両判決を比較してみたいと思います。

(1) 考慮要素

① 楽天の裁判例

プロ野球観戦に伴う危険から観客の安全性を確保すべき要請と観客側にも求められる注意の程度、プロ野球観戦にとって本質的要素である臨場感を確保すべき要請という諸要素の調和の見地から、プロ野球の球場に設置された安全設備について、その構造、内容に相応の合理性が認められるか否かを検討すべきである。

(i)観客の安全確保、(ii)観客に求められる注意の程度、(iii)プロ野球観戦の本質的要素である臨場感の3つの要素をあげて、これらが調和するようなところで安全性を検討することになります。

②札幌ドームの裁判例

(i)観客の安全確保、(ii)観客に求められる注意の程度を挙げています。
しかしながら、プロ野球観戦の本質的要素である臨場感の要素については、生命・身体に対する安全の要請と、臨場感の確保という娯楽的要素を同列に論じるべきではないとしています。

(2) 観客に求められる注意の程度

① 楽天の裁判例

  1. 野球は、競技をしている選手はもちろん、観客に対しても、本質的に一定の危険性を内在している
  2. プロ野球が日本国内に おいて広く普及していることは公知の事実
  3. ファールボールが観客席に入る危険のあることも、少なくともプロ野球の観戦に行くことを考える 通常の判断能力を有する人にとって容易に認識し得る性質のものといえる
  4. 球場に設置さ れた安全設備の存在を前提としつつ、観客の側にも相応の注意をすることが 求められているというべき

プロ野球に来た観客は、観戦には危険が付きものであることを認識しているという前提(i〜ⅲ)で、ネットで保護されていない座席に座ったのであれば、ネットがないことを前提に相応の注意が求められる(ⅳ)ということなろうかと思います。

それゆえ、観客に求められる注意の程度は、広くなります。

②札幌ドームの裁判例

  1. プロ野球観戦が、他のプロスポーツ観戦と比べ、格段に危険性の高いものであるとの一般的認識がある訳ではない
  2. 観客が、常に野球に関する知識が豊富であったり、野球のルール等熟知している訳ではなく、野球に特段興味はなく、野球のルール等を知らない者が含まれているのは明らか
  3. 球団・球場は、上記iiの実態を容易に把握でき、認識していたはずであり、野球のルール等知らない観客の存在に留意して、ファウルボールの危険性や安全設備を設け、危険への注意喚起を行い、打球が飛来した際にとるべき回避行動を周知するなど安全対策を行うべき
  4. 観客がプロ野球が行われている間、全ての機会に打球の所在を目で追っていなければならないとするのは現実的ではなく、実態としてもそのようなことは認められない
  5. 観客の注意義務の内容は、試合の状況に意識を向けつつ、なるべくボールを目で追っておくべきであるが、ボールを見失った場合には、周囲の観客の動静や球場の注意喚起を手がかりにボールとの衝突を回避する行動をとる限度で認められる

札幌ドームの裁判例では、楽天の裁判例に比べ、観客の注意の程度をかなり限定しています。その反面で、球団・球場側は、野球を知らない・野球に興味のない観客の存在を前提とした安全措置とることが要求されていると解されます。

(3) 結論の相違

① 楽天の裁判例

  • 内野フェンス(ネット含む)の高さは4.29-4.79mで、『屋外体育施設の建設指針』の数値(3m)を満たし、通常想定されるライナー性の打球を防ぐのに十分な高さであり、他球場との比較でも平均的(約4.59m)な高さ
  • チケット裏面に注意文言の記載
  • 「ファウルボールにご注意ください」と記載された看板が相当数設置され、イニング間にプラカードを持った職員が観客席を巡回
  • 試合前・試合中に電光掲示板でファウルボールへの注意喚起及び場内アナウンス
  • ファウルボールが生じた際、警笛による警告

以上から、内野席フェンスの構造・内容は、採用されている安全対策と相まって、観客の安全性を確保するために相応の合理性があり、通常有すべき安全性を備えていると判断しました。

②札幌ドームの裁判例

  • 内野フェンスは、約2.9mで、フェンスの上に防球ネットはない
  • 試合観戦契約約款にファウルボールへの注意喚起が記載(HP上で公開等誰でも閲覧可)
  • チケット裏面に注意喚起文言
  • 試合前・試合中にドーム内大型ビジョンでファウルボールへの注意喚起及び場内アナウンス

上記各種注意喚起は、ファウルボール飛来の危険性が一般的にありうることを知らせるものであるが、観客の安全性確保に不十分としています。

警笛を鳴らしていたことについては、警笛を鳴らしても、ボールの所在を把握することは困難であり、警笛をならした場合には、即座に上半身を伏せるといった行動を周知しているような場合でなければ、警笛を鳴らしても、速いライナー性のボールを回避できないとしています。

この裁判例は、次の2点を十分に周知して意識付ける必要があったとしています。

  •  投手の投球動作から打者の打撃に至るまでの間に目を話すと、ごく僅かな時間のうちに高速度の打球が観客席に飛来する危険性があり、死亡や重大な傷害を負う可能性があること
  • 打球を見失った場合に、ボールとの衝突を回避するためにとるべき具体的な行動の内容

ネットがないこと、安全対策が十分でなかったこと、及び観客に要求される注意の程度を踏まえて、事故のあった座席周辺において、安全性を欠いていたと判断しました。

なお、球団・球場側は、被害者にもボールを見ていなかった過失があり、過失相殺を主張して、損害額の減縮を試みましたが、先に述べたとおり、観客の注意の程度は限定されていることを踏まえて、被害者に過失なし、としています。

アメリカでは・・・ 

野球場のファウルボール事故について、希望する観客のためにネットで保護された座席を相当数提供し、最も危険な場所であるホームプレートの背後にネットを設置していれば、観客に対する保護義務を果たしたとするBaseball Ruleにより、ネットのない座席でファウルボールに当っても、球団・球場は原則責任を負わないことになっています。

Baseball Ruleは、一般の企業が負うビジネス上の責任に比べて、野球場の所有者(球場)やオペレーター(球団)の責任をかなり制限するものです。

野球場の 所有者やオペレーターだけ例外的な扱いをする理由がないとして、Baseball Ruleを否定する州も現れています。
ニューメキシコ州やアイダホ州の最高裁は、野球場の 所有者やオペレーターだけ例外的に扱う理由がないと判断しています。
特にアイダホ州の最高裁は、例外的な扱いをするのであれば、裁判所ではなく、議会(立法機関)で行うことだと指摘しています。

もっとも、多くの州では、Baseball Ruleを適用しています。その理由としては、プロ野球チームを招致あるいは維持するためだとも言われています。

州によっては、このルールを立法化(多少バリーエーションがあります)している例もあります。

  • イリノイ州 Baseball Facility Liability Act
  • アリゾナ州 Arizona Revised Statues 12-544
  • コロラド州 Colorado Baseball Spectator Safety Act
  • ニュージャージー州 New Jersey Revised Statutes 2A-53A-43〜48

◯Baseball Ruleの適用の有無による違い

アメリカでは、上記の状況ですので、事故が起こった州によって、結論は大きく変わります。同種の事案で、一方は賠償を得て、一方は自己責任とされてしまうのは、違和感がありますが、州政府も国家として自治権を持つアメリカならではの現象でしょうか。

▷Baseball Ruleの適用を認めている州の事案

2002年5月、ネバダ州ラスベガスを本拠とするマイナーリーグの試合。球場内の上部に設けられた食事をしながら野球観戦できる”ビアガーデン”(グランドからは3〜40m離れている。防球ネットで保護されていないエリア)を訪れていた夫婦が、食事をしている時に、妻の顔面にボールが直撃し、深刻な傷害を負った事案。
ネバダ州の裁判所は、Baseball Ruleを適用して、妻の訴えを退けています。

2009年7月、ヒューストン・アストロズが州兵とその家族を野球観戦に招待しました。招待席はライト側の外野の一角でした。打撃練習中に、球場に到着した女性が赤ちゃんを抱き、ベビーカーを持って自分の席に行こうと通路を降りていたところ、係員からベビーカーを所定の位置に預けるように言われました。その女性は、再び、赤ちゃんを抱き、ベビーカーを持って、通路を上っていたところ、誰かが彼女の方にボールが飛んできたこと警告したため、振り返ったところ、ボールが顔を直撃し、片方の目を失明した事故が生じました。しかし、テキサス州の裁判所は、Baseball Ruleを適用して、母親の訴えを退けています。

▷Baseball Ruleの適用を否定した州の事案

2003年7月、ニューメキシコ州アルバカーキを本拠とする4歳の子どもが両親とともに、バッティング練習中、レフトスタンドにあるピクニックエリアにいたところ、フェンスを飛び越えた打球が子どもの頭にあたり、頭蓋骨骨折した事案。
ニューメキシコ州の一審裁判所はBaseball Ruleを適用しましたが、控訴審は適用を否定し、最高裁もこれを追認しています。
この事件は、その後、和解によって解決したようです(和解金額は秘密のようです)。

2008年8月、アイダホ州ボイシを本拠とするマイナーリーグの試合。球場3塁側の外野席あたりにある、ネットで保護されていないエクゼクティブクラブ(野球を見ながら社交活動できる場所と思われます)で事故が起きました。クラブの入り口には、ファウルボールが危険であることを示す表示はなく、チケットの裏面に注意喚起が書かれている程度でした。
妻と孫を連れてきた男性が、試合を見ずに、人と会話をしていたところ、危険を叫ぶ声が聞こえたので、振り返ったところ、ボールが顔面を直撃して片目を失明した事案。前述のとおり、アイダホ州の裁判所は、Baseball Ruleの適用を否定しました。

2010年5月、アトランタ・ブレーブスの試合中、3塁側の客席に座っていた6歳の少女が、バッターの打った鋭いライナー性の打球が頭にあたり、頭蓋骨骨折し、脳に障害が遺った事案。
ジョージア州の一審・二審ともBaseball Ruleの適用を否定しました。MLBのチームの本拠地がある州としては画期的な判決であると思われます。

Baseball Ruleの適用が否定された場合、当然に、球場・球団の責任が免責されることはなくなり、他の事故と同様の枠組みで判断されることになります。多くの州では比較過失という双方の過失の程度に応じて損害額を決める方法を採用する州が多いようです)

今後の課題など

(1) 札幌ドーム一審判決から学ぶ

この判決の内容・結論には賛否両論あると思いますが、この判決が指摘する視点は、今後の野球場の安全性を考えるにあたって、参考となる点があると思います。

①臨場感と安全性の関係

これまで楽天の裁判例の流れを汲む一連の裁判例は、上記のとおり、観客の安全確保、観客に求められる注意の程度、プロ野球観戦の本指摘要素である臨場感という要素の調和の中から合理的な安全性を判断するものでした。

個人的に、法律家として、従来の判断枠組みに違和感を覚えていました。それは、観客の安全確保と臨場感というエンターテインメント的要素を同列に扱っていると思われたからです。

この点は、札幌ドーム一審判決が指摘したように同列に扱うべきではいと思います。
臨場感を追求するために、ネットを取り外したり、ネットのないフィールドシートを設けたりすることは、より危険な状態に観客を置くことになります。臨場感を増せば、その分危険が広がるのだと思います。危険が広がる分、安全対策を十分に行う必要があります。

②観客の注意の程度

札幌ドーム一審判決では、観客の注意の程度を引き下げています。確かに、自分が野球を観に行った時のことを考えると、全てのボールに注視しているかといえば、していません。この点は、同判決の指摘するとおりであろうと思われます。

ただ、法的な観点から、これで良いのかといえば、即断できないところです。
野球を知らない人でも、野球がボールを投げて打つものであり、どこに飛んで行くか分からないこと、自分の座った席がネットで保護されているかどうか分かること、くらいは容易に認識できると思います。
そうであれば、やはり、実態としては見ていないこともあるが、観客の法的な義務としては、観戦時にはボールをきちんと見ていましょう、ということになるのではないでしょうか。

③安全対策

札幌ドーム一審判決は、観客がボールを見ていないことを前提に安全設備を設けるべきという論調です。これは観客がボールを見ていない場合もあってよいのかということを前提としてもので、上記の議論に左右されるところと思われす。

もっとも、同判決が具体的に示した点については、採用の余地があるように思います。

  1. ライナー性の早い打球が飛んでくる可能性があり、当たると大きな怪我につながるおそれがあることを周知すること
  2. ボールを見ていなかったり、見失った場合は、即座に上半身を伏せるようにすることを周知すること
  3. 警笛が鳴ったら、即座に上半身を伏せることを周知すること

(2) 今後の課題

プロ野球ファンの拡大のためには、従来の野球ファンだけでなく、子どもからお年寄りまで新規のファンの獲得を目指すことになります。

野球場で観戦する魅力は、臨場感であることは間違いありません。エキサイトシートで観戦した際は、選手と同じくグランドに入って守っている感覚を覚えました。

しかしながら、法的な観点は別として、野球を知らない人たちが楽しんでもらえるように、球団・球場は努めていかなければならず、現に日夜そうした努力をしているところだと思います。

今後、新規のファンを取り入れつつ、従来の野球ファンが臨場感を楽しめるようするために、いくつか検討すべき課題があると思います。

①ファウルボールの飛球調査

プロ野球で使用する全球場で、どのようなファウルボールがどのあたりに飛んでいるのか調査をします。
サンプル調査ではなく、全試合でファウルボールを調査すれば、それぞれの球場で危険なボールが飛ぶ場所の特定ができるのではないでしょうか。

そうした調査を踏まえて、各球場において具体的な安全対策を検討することができると思います。

調査結果をすべての人が閲覧できるようにしたり、各球場の危険マップを作成してもよいと思います。

あまりに危険を煽るとかえってチケットが売れなくなるという営業上の問題はあるかもしれませんが、ここは売り方次第なのではないかという気がします。

②アルコール規制

野球場の運営にはビールなどアルコール類の売上は大きいとは思いますので、経営的には受け入れがたいとは思います。

しかし、アルコールを飲み過ぎて、酔って判断力が鈍くなったり、回避行動ができなくなったりすることで、事故の危険が高くなると思われます。

アルコール規制の問題はケンカなど観客同士や球団・球場職員とのトラブル防止という面も入ってくると思います。

MLBの多くの球場では、それぞれアルコール提供の指針を作成しています。
例えば、ボストン・レッドソックスの本拠地フェンウェイ・パークでは、スタンド内でのアルコール販売は7回の裏まで、販売時にIDで年齢チェックをし、一つのIDで販売できるビールは2杯までなど。

③観戦スタイル

日本の野球場では、アメリカと異なり、幕の内弁当を売っています。まさに、歌舞伎座など劇場と同じように、膝の上に弁当を置いて食事をしながら、観戦するスタイルです。

膝の上に弁当を広げて食事をしていれば、当然ながら、回避行動は限られます。

ボールを見失った人だけでなく、食事中の人も警笛が鳴ったら、上半身を伏せるように周知していく必要があるのではないでしょうか。

また、主に外野席になりますが、完全にグラウンドに背中を向けている応援団についても、十分な注意喚起が必要になってくると思います。

④新四谷法律事務所の伊東卓弁護士のご示唆

意見交換をする中で、貴重なご示唆をいただきましたので、紹介させていただきます。

  1. プロ野球選手とのキャッチボールイベントや投球練習を間近で観ることのできる機会を増やす
    硬球が「硬くて重くて速くて痛い」ものであることを、楽しみながら実感する機会になります。
  2. 座席はバッテリーと打席の方を向くようにする
    バッテリーと打席の方を向いていない座席では、自ずと目線がバッテリーと打席から外れてしまいますので、そのような座席は方向を修正する必要があります。
  3. 危険なシートを色分けし、事前に危険性を十分に説明する

⑤補償制度の構築

訴訟での争いは、法的責任の有無の争いになり、かつ相当時間を要します。長く争った結果、被害者の主張が認められないことがあることは、過去の裁判例からも明らかです。

グラウンドをネットで覆ってしまわない以上、ファウルボールや折れたバットが観客席に飛び込み、これにより観客が怪我をする可能性はゼロにはなりません。いわば、不可避的に発生する事故といえます。

ファウルボール事故を不可避的に発生するものと考えれば、プロ野球を実施し、及びこれを観戦する人々が応分の負担をして、負傷してしまった人に補償をすべきと思います。

端的にいえば、プロ野球の球団がその試合の売り上げの一部を拠出し、及び観客の支払うチケット代に少し補償金を上乗せして、その費用で保険制度を作ることが考えられます。

このような保険制度ができれば、責任の有無を問わず、事故にあった観客には一定程度の補償が迅速になされることになります。

責任の有無を議論することも重要ですが、不可避的に発生するファウルボール事故により被害を受けた観客に対する迅速な補償を考えることも、同様に重要なことと思われます。

更新:2015年5月9日

弁護士 大橋卓生

参照記事:
Majority “Baseball Rule” Limits Spectator Liability
Update: ballpark liability and the baseball rule

関連記事:
ファウルボール事故の法的責任
【「スポーツメディスン」No116,ブックハウス・エイチディ,2009】

この記事は、すべて一般的な情報提供のために掲載するものであり、法的・専門的なアドバイスを目的とするものではありません。文章内容は、適宜、訂正や追加を行うことがありますので、予めご了承ください。

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