アマチュアリズムの危機 or 改革?


全米の大学スポーツを統括するNCAAは、その規則にアマチュアリ規定を設けています。

基本的に、スポーツで報酬を得てはならず、エージェントと契約してはならない、とされています。こうした行為を行うとアマチュア資格を失い、大学スポーツに参加できなくなります。

NCAAでは、アメリカンフットボールと男子バスケットボールが人気で、1000億円ともいわれる収益を支えています。これらのスポーツの放映権の販売やビデオゲーム化のライセンスなどが大きな収益源となっています。

ところが、先のアメリカンフットボール規定によって、その収益は学生アスリートには配分されてきませんでした。

これまでに、学生アスリートがNCAAを相手取って訴訟を提起してきましたが、中でもO’bannon Caseは、こうしたアマチュア規定に対して大きな影響を与えています。

O’bannonさんはNCAAの元男子バスケットボール選手ですが、NCAA及び参加の大学が学生アスリートの氏名・肖像を利用してビデオゲーム化のライセンスをして巨額の収益をあげているのに、学生アスリートに還元されていないことを不服として、NCAAのアマチュア規定が独占禁止法に反すると提訴しました。

2014年に、連邦地裁のClaudia Wilken判事は、NCAAのアマチュア規定を独占禁止法違反と認定し、かつ、年額5000USDを上限に学生アスリートへ支払を命じました。

2015年に、連邦高裁は、独占禁止法違反については連邦地裁の結論を維持しましたが、支払命令は取り消しました。

両者ともに連邦最高裁へ上告をしましたが、いずれも棄却されて、連邦高裁の判断で確定しました。

NCAAはこれを受けて学生アスリートに新たな利益を供与するに至りました。学費のほか書籍や備品代などカバーするフル奨学金などです。

しかしながら、アマチュア規定の基本的な枠組み(スポーツによる報酬を得ないこと、エージェントと契約しないこと)は変更するに至りませんでした。

最近、奨学金を学費等学業関連費用に制限するNCAA規則を巡って独占禁止法違反とする訴訟が提起され、NCAAのアマチュア規定は攻撃に晒されています。
なお、この訴訟もWilken判事が担当しているようです。

こうした中、ワシントン州の共和党議員が、NCAAアマチュア規定を破壊するような法案(House Bill 1084)を提案して、注目されています。

学生アスリートに平等の権利を与えることを目的とした法案のようです。

学生アスリートが、パブリシティ権を放棄するか、大学スポーツに参加かするかの二者択一を強制される現状は不公正であるとして、(1)学生アスリートがパブリシティ権を利用して無制限に対価を得ることができること、(2)学生アスリートがその利益を代理するためにエージェントと契約できること、(3)そうした行為をすることでペナルティを課されないこと、を定めています。

提案者によれば、この法案が通れば、NCAAのアマチュア規定は、ワシントン州の消費者保護法及び独占禁止法に違反することになるのだそう。

ワシントン州立大学は、この法案が成立すれば、ワシントン州の学生アスリートはNCAA規則に違反することとなるとして懸念を示しています。

報道された提案者のコメントによれば、いますぐにこの法案が通るとは考えていないようですが、正しい方向に向かわせる第一段階になれば、とのこと。

NCAA傘下のノースウエスタン大学でアメリカンフットボールで奨学金を得ている学生アスリートが労働者と認定された事案もありましたね。

商業化したオリンピックでは、とうの昔にアマチュア規定は削除されています。

学生の本分は学業にあるとしても、学生アスリートを利用した得た収益については学生アスリートに還元されてしかるべきと思います。ただ、利益追求に走って、学業がおろそかになることは避けるべきとは思います。

O’bannon CaseのWilken判事の支払プランは5000USDとする根拠がないと批判されましたが、バランスがいい感じな案だと思います。

「日本では、日本版NCAAと謳われきたUNIVASが動き出すようですが、アマチュア規定とどのように向き合っていくのでしょうか。」と、他人事のようには言ってられないです。

弁護士 大橋卓生