もう一つの「アラバマ物語」 -舞台化紛争-


なぜ、”To Kill a Mockingbird”がアラバマ物語という邦題になるのか分かりませんが、英題を直訳しても意味がよく分からないので、物語の場所をタイトルに持ってきたのでしょうか。

邦題からすると牧歌的な映画と思いきや、米国南部の人種差別をテーマとしたもので、白人女性に対するレイプ容疑で逮捕された黒人を弁護する白人弁護士のお話。

白人弁護士Atticus Fintchに分するのはGregory Peck。この映画でアカデミー主演男優賞を受賞しました。

この映画は昔観ましたが面白かったです。こういう映画に影響を受けて弁護士を目指しましたといえればかっこいいのですが。

この映画は、映画と同じタイトルの小説を原作にしており、その小説は、Harper Lee作。Leeさんは既に故人に。

実は、この作品、2018年にブロードウェイで上演するために舞台化が進められていました。

Leeさんは、亡くなる数か月前に、演劇プロデューサーと、小説”To Kill a Mockingbird”の舞台化契約を締結していました。10万USD+売上歩合。

著名な脚本家によって書かれた脚本の中で、Atticus Fincthが原作とは異なるキャラクターになっていることが中心的な争いのタネです。

映画では平等で毅然とした正義の人という感じでしたが、粗野で自己チューな感じだそう。

一般的に、原作を利用する契約では、原作者がどの程度クリエイティブをコントロールできるかに関する条項が設けられます。

訴状によれば、こんな規定が設けられていたようです。

“Author shall have the absolute and unconditional right to approve the Playwright for the Play. … Author shall also have the right to review the script of the Play and to make comments which shall be considered in good faith by the Playwright, and the Play shall not derogate or depart in any manner from the spirit of the Novel nor alter its characters. If the Author believes that the Play does so derogate or depart, or alter characters, Producer will be given notice thereof as soon as possible, and will be afforded an opportunity to discuss with Owner resolutions of any such concern.”

作り手側からすれば、原作をいかに料理するかというところが肝であり、原作者側からすれば原作の世界観やキャラクターの性質などは変えて欲しくない、というのは原作もののコンテンツの常ではあります。

ブロードウェイの演劇化で原作のadaptationの内容が問題になるのは珍しい例ではないかと思います。裁判の行く末に興味をもっていたのですが。。。

裁判所は、公開スケジュールを考えてか、the Play shall not derogate or depart in any manner from the spirit of the Novel nor alter its charactersの点を陪審員に判断させるため、早期にトライアルを予定したようですが、トライアルの前に、当事者間で和解(非公開)が成立しました。

両当事者とも自信がなかったのか、白黒はっきりさせたとしてもメリットがないと感じたのか分かりませんが、クリエイティブコントロールに関する裁判所の判断が見れなくて残念です。

舞台は、無事に予定通り2018年暮れにブロードウェイで上演されています。レビューをみると、原作を壊しておらずnot guiltyだが、not innocentとのこと。微妙な感じなのでしょうか(・・;)

観てみたい。

弁護士大橋卓生