Vijay Singh ドーピングケース


米国でツアー34勝を誇るレジェンドゴルファーVijay Singh(ビジェイ・シン)のドーピングに関する訴訟が和解終結しました。

5年前に、Vijay Singhは、Sports Illustrated誌の記事の中で、Deer antler sprayを使用している旨を述べました。Deer antler sprayには、WADAが禁止物質としているインスリン様成長因子-1(IGF-1)がごく微量ですが、含まれていました。

Deer antler sprayは怪我の治療などに用いられるステロイド代替物のような商品のようです。

PGAツアー側は、Vijay の尿検体を検査することなく、この記事をもってドーピングの自白として3か月の出場停止を科すことをアナウンスしました。

ところが、その2か月後、WADAがDeer antler sprayに含まれる微量のIGF-1については、尿検体から検出されなければ問題にしないと扱いを変更しました。当時、MLBやNFLの多くの選手がDeer antler sprayを使用しており、その扱いが問題になっていたようです。

このためPGAツアーはVijayに対する処分を実施しませんでした。

Vijayは、PGAツアーが拙速にドーピング違反をしたと周知したことから、公に恥をかかされたことを理由に、PGAツアーに訴訟を提起していました。

その訴訟が和解で終結し、5年に及んだVijayとPGAツアーの紛争が解決しました。

PGAツアーは、WADA規程を完全に準拠せず、独自のアンチ・ドーピング・プログラムを設定しています。WADA規程の処分が原則資格停止4年になっているので、プロには厳しすぎるという事情があってのことと思います。

そのプログラムによれば、禁止物質の使用の自白がドーピング違反になるとされています。

これに対しWADA規程では、禁止物質の使用はドーピング違反にあたるとされていますが、その自白=ドーピング違反とはなっていません。Lance Armstrongケースでも、証人の告発等があり、本人の自白も含めて禁止物質の使用を認定しています。

憲法で次のような規定があったことを思い出しました。

憲法38条

 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

自白だけでドーピング違反としていいのだろうかと思いました。

Vijayケースでは、PGAはVIjayが使用していたDeer antler sprayのサンプルをテストして微量のIGF-1を確認はしたみたいです。

弁護士 大橋卓生