Beyoncé vs Feyoncé


Beyoncé は、世界的に有名なアーティストです。

Feyoncéは、個人が立ち上げたテキサス州のアパレルブランドです。Feyoncéのブランドでシャツタンクトップマグカップなどを販売しています。Beyoncéをもじったブランド名です。マグカップに記載されている”HE PUT A RING ON IT”は、Beyoncéのヒット曲”Single Ladies(Put a Ring on It)“からのものと分かる感じで使ってます。

当然、紛争になっています。

Beyoncéは、BGK Trademarks Holdingsという自身の管理会社を立ち上げて、Beyoncé商標を管理しています。ちなみに、BGKは彼女の本名Beyoncé Giselle Knowlesの略称のようです。
USTPOで調べたところ、2018年11月現在、13のBeyoncé商標が登録されていました。主に香水や化粧品、エンタテインメントサービスといった商品・役務で登録されていました。

Feyoncéブランドを立ち上げた個人は、2015年11月に、FeyoncéとFeyonceの商標登録をUSTPOに申請したようですが、Beyoncéに類似するとの理由で一部却下されたようです。
ただ、アパレル(Tシャツなど)を指定商品とするFeyonce商標の登録は認められています。同じまたは類似する指定商品にBeyoncé商標が登録されてなかったので登録が認められてしまったのではないかと思います。

Feyoncé社は、過去にBeyoncé側から警告を受けていますが、これを無視してきたことから、BeyoncéはFeyoncé社に対し、商標権侵害等でFeyoncéの使用差止等を求めて提訴しました。

Beyoncé側は、連邦地裁で、サマリージャッジメント(陪審員による審理によらず裁判官の判断で判決を出すこと)により差止を命令を求めたのですが、裁判官はこれを棄却しました。

棄却した理由は、Nike vs “Just Did It ” Enterpriseのパロディ商標ケスと類似すること、でした。

このケースは、NikeをもじったMikeとスウォッシュマークを使ったT-shirt等を販売していた”Just Did It ” EnterpriseをNikeが商標権侵害で提訴したものです。
連邦控訴審(7th Circuit)は、パロディの核心は一見して本物のように誤解させることにあるが、商標権侵害の文脈では、購入時に本物と誤解するかどうかにあるとして、顧客はMikeと分かった上で購入しているから、NikeとMikeは混同しない、と判断しました。

こうしたことを踏まえてBeyoncé事件の裁判官は、購入時にBeyoncéとFeyoncéを混同するか否かは陪審員が決めると判断しました。まだ最終判断が出てませんが、Beyoncéが負けた、と報道されています。び和解勧告もされたみたいですが、今後、陪審員がどういう判断をするか興味深い事案です。

金沢工業大学虎ノ門大学院の授業でパロディ問題を扱っていますが、商標のパロディは扱いが難しいですね(もっと難しいのは、そっくりさんパブリシティですが)。

米国エンタメ業界は多くの紛争を提供してくれるので、引き続き研究していきたいと思います。

弁護士大橋卓生